神社解説

心不全治療の新薬:エンレスト(サクビトリルバルサルタン)の効果と副作用

エンレストの作用機序

エンレストは、

  • ① ネプリライシン阻害薬であるサクビトリル
  • ② ARBであるバルサルタン

の2つの成分からなり、

ARNI: Angiotensin Receptor-Neprilysin Inhibitor(アーニィ)と呼ばれる新しいタイプの治療薬です。

エンレストは投与後、速やかにサクビトリルとバルサルタンに分離されます。

サクビトリルのはたらき

体内には利尿作用や血管拡張作用を有するホルモンとしてナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNPなど)が存在しますが、ネプリライシンという酵素によって分解されてしまいます。

サクビトリルは体内で活性体に変換され、ネプリライシンを阻害します。その結果、体内のナトリウム利尿ペプチドの量が増加し、利尿作用や血管拡張作用によって体液量が減少して心負荷を軽減します。

バルサルタンのはたらき

バルサルタンはARBに分類される薬剤です。レニンアンギオテンシン(RA)系は、血圧や細胞外容量の調節に関わるホルモン系の総称で、血液量の保持と、血圧上昇作用により血液の循環調節機構を形成しています。

ARBは、アンジオテンシンⅡが作用するAT1受容体を遮断することで血管拡張作用、血圧低下作用を示します。

2つの成分が配合されている理由

エンレストは、2つの薬の成分が配合されているいわゆる配合剤とは違い、2つの成分があって初めて薬として成立しています。

実は、ネプリライシン阻害薬は単独では効果が得られません。

ネプリライシンはアンジオテンシンIIも分解するため、ネプリライシンだけを阻害するとRA系が亢進してしまい、血圧上昇や血管収縮などを引き起こすからです。

そこで、アンジオテンシンIIが結合するAT1受容体に対する拮抗作用を示すARBを併用することで、RA系を抑制してネプリライシン阻害薬による効果を発揮させているのです。

-神社解説