慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)
腎臓は、骨に関わるミネラルであるリンとカルシウムの代謝調節に重要な役割を果たしています。腎機能が低下している透析患者さんは、リンがうまく排泄されず、また腸管からのカルシウム吸収も不足するために、骨がもろくなったり、血管などの組織が石灰化したりして、さまざまな問題が起きることがあります。 このような病態は「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)」と呼ばれており、透析導入前からの管理も必要と考えられています(*1)。
透析患者さんは骨折しやすい
健康な人の骨は、つくるスピード(骨形成)と壊すスピード(骨吸収)が釣り合って、一定の骨密度を保っています。

一般の人でも加齢や閉経によって骨密度は低下しますが、透析患者さんでは以下のようなメカニズムによって、骨密度がさらに低下しやすくなります。
【1】腎機能が低下すると、尿中へのリンの排泄が十分に行えないため、体にリンが溜まりやすくなります。
【2】リン(P)とカルシウム(Ca)は密接な関係を持っており、血液中のリンが増えると、食物中のカルシウムを腸から吸収する働きを抑えて、血液中のカルシウムを減らす仕組みがあります。

【3】血液中のカルシウムが減少しすぎると、逆に体は血液中のカルシウムを上げようとします。副甲状腺という器官から、PTHというホルモンが分泌され、骨からカルシウムを分解して(骨吸収)、血液中のカルシウムを補おうとします。

【4】このような状態が続くと、血液中のカルシウムが増えていてもPTHの分泌が続くようになります。これを、二次性甲状腺機能亢進症といいます。二次性副甲状腺機能亢進症になると、骨吸収が進んで骨密度が低下します。

透析患者さんは、このようにして骨密度が低下することなどにより、骨折しやすくなります。透析患者さんは一般の人に比べて、大腿骨頚部骨折(太ももの付け根の骨折)が5倍程度多いことがわかっています(*2)。

異所性石灰化
腎機能が低下していてリンがうまく管理できない場合、骨がもろくなりやすいだけでなく、体のさまざまな箇所に問題が生じる可能性もあります。
前述した二次性副甲状腺機能亢進症になると、血液中のカルシウムが過剰になりますが、リンの排泄がうまくできずにリンも過剰な状態にあるため、カルシウムもリンも高い状態になります。すると、血液中で余分なカルシウムとリンが結合して、リン酸カルシウムという骨や歯のもととなる結晶がつくられます。
このようにしてつくられたリン酸カルシウムは、関節や筋肉、皮膚、肺、心臓そして血管など全身に沈着します。これが異所性石灰化です。
異所性石灰化が起こると、関節や筋肉では痛み、皮膚ではかゆみ、肺では呼吸不全、心臓では弁膜症、そして血管では動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞といったさまざまな病変があらわれることがあります。

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