「薬局のアンテナ」のてっちゃんです!
今回は、後発医薬品調剤体制加算における後発医薬品使用率の計算ルールを詳しく解説します。
後発医薬品調剤体制加算は、後発医薬品の使用率によって点数が異なります。使用率がどのように計算されるのかを理解しておくことで、使用率向上に向けた取り組みを行うことができます。
本コラムでは、計算方法だけではなく、計算に含めるもの・含めないものを分かりやすく解説します。
なお、「後発医薬品の使用率の計算」と「変更調剤可否の判断」は混同されがちなのですが、全く異なる考え方なので注意しましょう。今回は「後発医薬品の使用率の計算」についての解説になります。

後発医薬品調剤体制加算の概要図(筆者作成)
後発医薬品使用率の計算式は?
後発医薬品使用率の計算式は以下の通りです。

後発医薬品使用率の計算式(筆者作成)
分母は全医薬品ではなく、[後発医薬品のある先発医薬品の数量]+[後発医薬品の数量]となっており、[後発医薬品のない先発医薬品(以降、新薬と呼ぶ)]は含まれていません。
これはつまり、後発品に変更出来るor変更した薬(分母)のうち、どれだけが後発品(分子)に置き換わっているかで判断されるということです。
新薬が計算式に入ると、薬局での取り組みが上手く反映されないためこのような計算式になっています。
後発医薬品調剤体制加算のカットオフ値とは?
これまでの通り、新薬は後発医薬品の使用率に影響を与えません。
つまり医師が新薬を処方して薬局でその新薬を調剤したとしても、後発品の使用率に影響を与えないため、医師の処方状況にかかわらず薬局の取り組みが平等に評価される仕組みとも言えます。
ただし、後発医薬品調剤体制加算を算定するには以下も満たす必要があります。

後発医薬品調剤体制加算の「カットオフ値」計算式(筆者作成)
この計算式は一般に「カットオフ値」と呼ばれ、50%を下回ると後発医薬品調剤体制加算を算定できなくなります。
この計算式を見ると、分母は[全医薬品の数量]となっており新薬も含まれていることが分かります。
つまり、新薬をたくさん調剤するとカットオフ値は50%を下回る可能性がある(後発医薬品調剤体制加算を算定できない可能性がある)ということです。
L-カルボシステイン500mg錠(全メーカー)
今回の改定で全銘柄が統一名称収載品に、カルボシステイン錠500mg「サワイ」、「ツルハラ」、「トーワ」、「JG」、「NIG」、「TCK」が該当。
- ムコダイン錠500mg:薬価 10.10円 「2」 → 10.40円(局方品の最低薬価) 「☆」
- L-カルボシステイン500mg錠:薬価 9.30円 「3」 → 10.40円(局方品の最低薬価) 「★」
- L-カルボシステイン500mg錠(旧NIG):薬価 7.90円 「3」 → 10.40円(局方品の最低薬価) 「★」
先発・後発ともに最低薬価による引き上げ、同じ薬価に。
ムコダイン錠500mgは「☆」、カルボシステイン錠500mgは「★」に。
後発医薬品の使用率やカットオフ値から除外される品目とは?
後発医薬品の使用率やカットオフ値から除外される医薬品は以下の通りです。
①先発医薬品と同額又は薬価が高い後発医薬品、後発医薬品と同額又は薬価が低い先発医薬品
②基礎的医薬品
③準先発品
➃施設基準で定められた品目(エンシュアや漢方等)
順番に見ていきます。
➀先発医薬品と同額又は薬価が高い後発医薬品、後発医薬品と同額又は薬価が低い先発医薬品
要するに、後発医薬品の方が薬価が高いということであり、その場合は後発品に変更しても医療費は抑えられないため、後発医薬品の使用率からは除外するということです。
②基礎的医薬品
基礎的薬品とは、分かりやすく表現すると「医療上の必要性が高いので、薬価が下がりすぎないようにした薬」です。
ルール上、後発医薬品の使用率からは除外されることになっています。
なお、令和7年4月1日時点の基礎的医薬品の一覧は以下の通りです。
フロモックス、アレビアチン、グリセリン浣腸などが該当しています。
③準先発品
準先発品とは、昭和42 年以前に承認・薬価収載された医薬品のうち、価格差のある後発医薬品があるものです。
先発品という概念があやふやだった時代の名残と言えます。
➃施設基準で定められた品目(エンシュアや漢方等)
後発医薬品調剤体制加算の施設基準において、除外する医薬品が定められています。
具体的には、経腸成分栄養剤、特殊ミルク製剤、生薬、漢方製剤などです。
これらは調剤時に薬価数量単位が大きくなりやすいため、その影響を抑えるために除外されています。
➀~④を反映したリスト(後発医薬品の使用率に含める品目、含めない品目)も公表されています。
参考:診療報酬における加算等の算定対象から除外する品目リスト/令和7年4月時点/厚生労働省
ここまでの考え方を押さえつつ、参考にして頂ければと思います。
計算式から除外してもよい品目とは?
昨今の後発医薬品流通が不安定な状況をふまえて、計算から除外して良い品目が随時設定されています(カットオフ値の計算では除外不可)。
先ほど紹介した➀〜④と異なり、除外しても良いですし、除外しなくても良いことになっています。
対象品目は随時見直されますし、除外する際には対象品目全てを除外する等の条件もありますので、詳細はその都度通知を確認する必要があります。
なお、令和7年4月時点の最新の通知、対象の除外品目は以下となります。
参考:後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて/令和7年3月7日/厚生労働省
参考:診療報酬における加算等の算定対象から除外する品目リスト/令和7年4月時点/厚生労働省
補足
令和7年3月7日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡において、カットオフ値の分子に含めても良い品目のリストが別途示されております。
参考:カットオフ値の分子に含めても良い品目/令和7年3月7日/厚生労働省
まとめ
今回は、後発医薬品調剤体制加算で用いる後発医薬品の使用率の考え方を示しました。
「後発医薬品の使用率」と「変更調剤可否」は全く別の考え方ですが、混同されがちなので注意しましょう。
後発医薬品の使用率の計算式、及び計算式から除外する品目を理解しておくことで、後発医薬品の使用率を向上させる対策も考えやすくなるかと思います。
本コラムがその一助になれば幸いです。
今回は後発医薬品調剤体制加算に登場する「カットオフ値」についてです。中堅以上の薬剤師でも知らない人がけっこういますよね。
カットオフ値を簡単に説明すると、
「処方全体のうち、後発医薬品で調剤可能な品目の割合」
となります。
先発後発どちらで調剤したかは関係なく、後発医薬品が存在する品目がどれだけ処方されたかを示した数値です。
つまり、後発医薬品がまだ発売されていない先発品ばかり使っていると数値は下がります。
最近ではカルボシステインのように先発と後発が全て同じ薬価になってしまい、後発品の扱いから除外される品目も増えてきているので注意が必要ですね。
そもそもなんでカットオフ値なんてものが存在するかというと、先発品しかない品目ばかり処方して数品目だけ後発品銘柄処方すれば簡単に後発率100%になるためです。
(僕のような)悪い人たちに加算を悪用されないためのストッパー的な役割ですね。これだけ後発品が普及した今でも必要なのかは疑問ですが。
④〜⑥の3回で後発加算についてはおしまいです。現場では毎月のように確認する数値なのでしっかり理解しておきましょう🦭