初回の今週は、ピロリ菌の除菌療法についてです。

この薬が処方されるとき患者さんは初めて服用することになる上に、しっかり服用していただくことが大事になる薬のため、詳しく説明する必要があると思い調べました。
ピロリ菌1次除菌

まずは1次除菌についてです。画像のボノプラザン、クラリスロマイシン、アモキシシリンの3剤をまとめた「ボノサップパック」の他に、ラベプラゾール、クラリスロマイシン、アモキシシリンの3剤をまとめた「ラベキュアパック」があります。

ボノピオンパックもラベキュアパックも400と800があります。その違いはクラリスロマイシンの1日服用量の違いです。H.pylori感染の診断と治療ガイドライン2016改訂版では、非喫煙者においては除菌率に差がないため副作用発現率が低い400が推奨されています。なお、喫煙者においては800の方が除菌率が高いというデータがありました。
ボノサップパック400と800のちがいは抗生物質の量
ボノサップパック400
└タケキャブ錠20mg :2錠
└アモリンカプセル250:6カプセル
└クラリス錠200 :2錠
ボノサップパック800
└タケキャブ錠20mg :2錠
└アモリンカプセル250:6カプセル
└クラリス錠200 :4錠
見て気づくと思いますが、抗生物質であるクラリス錠のボノサップパック800のほうが1日量が多いです。
ピロリ菌の除去率において抗生物質が多いほうが効果があるように考えてしまいがちですが、実は効果に差はありません。実際にはボノサップパック400でも800でも同じくらいの除菌率が実際です。
クラリスロマイシンは苦味が強く、胃から吸収されてに唾液に溶けて苦味が出やすく、800はより強くにその苦味が感じられます。除菌を成功するために、飲み続けることができるかが鍵なのです。そのため、飲みやすいボノサップパック400のほうが主流として使われると考えられます。
ランサップとボノサップのちがい
ピロリ菌に抗生物質が効果を示すためには、胃の酸性度pHを弱める必要があります。そのため胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプインヒビター(PPI)という薬が使用されます。
ランサップとボノサップとはPPIと抗生物質1日分を1シートにまとめた薬です。
そのちがいは、PPIのちがいです。
ランサップ・・・タケプロン(ランソプラゾール)
ボノサップ・・・タケキャブ(ボノプラザン)
酸分泌抑制効果においてはボノプラザンはランソプラゾールよりも強力で、除菌効果も大きく引き離す結果が出ています。
ピロリ菌2次除菌

続いて、2次除菌についてです。1次除菌と比較するとクラリスロマイシンがメトロニダゾールになっています。1次除菌で除菌に失敗した場合や、クラリスロマイシン耐性菌と判明している場合などに行います。画像のボノプラザン、メトロニダゾール、アモキシシリンの3剤をまとめた「ボノピオンパック」の他にラベプラゾール、メトロニダゾール、アモキシシリンの3剤をまとめた「ラベキュアパック」があります。
3次除菌について

1次除菌でも2次除菌でも除菌に失敗した場合はメトロニダゾールをニューキノロン系に変えた3次除菌が行われます。ニューキノロン系の中でもシタフロキサシンが耐性菌が少ないというデータがありました。また、高用量PPIとアモキシシリンを併用した治療法もあります。これは服用回数を1日4回に増やすことで、時間依存性であるアモキシシリンの効果を最大限に発揮させようというものです。なお、3次除菌は保険適応外となるので自費で治療しなければなりません。
以上、ピロリ菌の除菌療法についてまとめてみました。
ピロリ菌除菌中に注意すること
お薬によるピロリ菌の除菌中に注意すべきことについては以下です。
お薬の副作用症状について
ピロリ菌除菌に用いるお薬には主に以下のような副作用症状が出ることがあります。
●腹部の張り ●軟便・下痢症状 ●悪心・嘔吐 ●味覚症状 ●肝機能障害 ●発疹などのアレルギー症状 軽度の症状であれば、2-3日様子をみることで軽快することが多いです。もしひどい下痢症状・腹痛や血便などがある場合や明らかにいつもとは違う症状、生活に支障をきたすような場合には、すぐに主治医や薬剤師に相談しましょう。薬の服用を続けるかどうかの判断は自己判断で行わず、必ず主治医や薬剤師の指示を仰ぐようにしましょう。
お薬の飲み合わせ
お薬を服用するためには飲み合わせに注意が必要となるお薬が数多くあります。飲み合わせに注意が必要なお薬が多くて掲載しきれないため、ここでは具体的なお薬名は省略しますが、他に飲んでいるお薬や治療中の疾患がある場合には、必ず医師や薬剤師に事前に伝えるようにしましょう。
アルコール(お酒)や喫煙は控えましょう
ピロリ菌の除菌率を高めるためには、ピロリ菌除菌中のアルコール(お酒)や喫煙を控えましょう。一次除菌、二次除菌とうまくいかなかった場合には、三次除菌は保険適応外となってしまいます。
アルコール(お酒)の摂取は、メトロニダゾールを用いる二次除菌の際には、お薬との相性が悪く、特に禁酒の指導が求められます。また、アルコール(お酒)やお酒と嗜むおつまみなどを摂取することで、胃酸の分泌が促進され、お薬の効果に影響が出る可能性や肝臓への負担が増えるなどの可能性も否定できないことから、除菌率や安全性を高めるためには控えることを強く勧めます。
ピロリ菌の除菌療法についての感想
3次除菌までいくと保険適応外になるため、服薬指導時に飲み忘れた場合の対応や服用継続が望ましい副作用の程度などについて詳しく説明したほうがいいと思いました。
患者さんに安心して7日間しっかり服用してもらえるように、学んだことを活かして服薬指導していきたいです。