抗不整脈薬の種類・作用機序と使い分け

目次

1.不整脈に使う薬とは

 不整脈とは、脈が正常より速くなる(100回/分以上)、あるいは正常より遅くなる(50回/分以下)もので、前者を頻脈性不整脈、後者を徐脈性不整脈といいます。薬物治療の対象となるのは、頻脈性不整脈です。ちなみに、徐脈性不整脈は主にペースメーカー植え込みにより治療します。

 抗不整脈薬は、心臓の電気活動を作り出すイオンチャネルをブロックする薬で、不整脈を停止させたり、軽症にしたり、起こりにくくしたりします。抗不整脈薬の分類としては、1975年に発表されたヴォーン・ウイリアムズ分類がよく知られています。これは1つの薬物のメインターゲットは1つのチャネルあるいは受容体と考え、Ⅰ~Ⅳの4群に分けるという考え方で、40年経った今でも使われています。

 Ⅰ群薬はナトリウムチャネル遮断薬、Ⅱ群薬は交感神経β受容体遮断薬、Ⅲ群薬はカリウムチャネル遮断薬、Ⅳ群薬はカルシウムチャネル遮断薬です。

 Ⅰ群薬はさらに活動電位の持続時間(心電図では「QT間隔」に相当します)に対する作用でa~cの3群に細分されます。Ⅰa群薬が活動電位持続時間(QT間隔)延長、Ⅰb群薬が短縮、Ⅰc群薬が不変です。同分類に基づく主な抗不整脈薬をに示します。

作用機序
❶ 抗不整脈薬の標的
 抗不整脈薬は、後述するようにそれぞれのイオン電流、あるいはこれを流すイオンチャネルを標的とすることから、活動電位、イオン電流の基礎的な知識は押さえておきたいところです。

❷ イオンチャネル
 イオンチャネルとは、細胞膜にあってイオンを通過させるタンパク質で、心臓の電気現象を作り出す働きをしています。イオンチャネルをイオンが通ることにより発生する電流をイオン電流といいます。細胞の内側に向かって流れる電流を内向き電流、外側に向かって流れる電流を外向き電流といいます。

❸ 活動電位とイオン電流
 心筋細胞の興奮を表す電気活動を活動電位と呼びます。心臓で主に活動電位の形成にかかわるイオン電流には、内向き電流のNa+電流・Ca2+電流と外向き電流のK+電流があります。

 心筋細胞膜は通常、細胞内がマイナス、細胞外がプラスに荷電されています。この陽極と陰極が分かれている状態を分極といいます。活動電位は内向きの電流で発生(脱分極)し、外向きの電流で元の状態、すなわち陽極と陰極が細胞膜を介して分かれた分極状態に戻ります。これを「再分極」といいます。

❹ 作業心筋と刺激伝導系心筋
 心筋細胞は、ポンプの作用をする心室筋などの作業心筋と、心拍を発生しこれを心臓全体に伝える刺激伝導系心筋に分かれます。刺激伝導系心筋は、上位の刺激伝導系(洞結節、房室結節)と下位(心室)の刺激伝導系(ヒス束、脚、プルキンエ線維)に分かれます。

 洞結節、房室結節の性質は特殊で、Na+電流はほとんど存在せず、脱分極はCa2+電流で起こり、再分極はK+電流で起こります(図1右)。

 それ以外の心筋細胞(心房筋、心室筋、下位の刺激伝導系)では、脱分極はNa+電流により起こり、再分極はK+電流で起こります。これらの細胞では、Ca2+電流は活動電位の中間部分(プラトー相)で働き、心筋細胞の収縮に関与します(図1左)。

このように心筋細胞は、細胞内外での微小な電気的変化を通して、脱分極と再分極を繰り返すことで、収縮と拡張を維持しています。

1.Ⅰ群薬(ナトリウムチャネル遮断薬)

 Ⅰ群薬は洞結節、房室結節以外の心筋細胞で細胞膜のナトリウムチャネルに結合し、細胞内へのNa+の流入を抑制することで、活動電位の立ち上がりを抑え、これらの心筋細胞の興奮性を抑制し、刺激の伝導を遅延させます。

 心筋細胞には興奮した後、次の刺激が来ても反応できない時間があり、これを不応期といいます。

(1)Ⅰa群薬
 ナトリウムチャネルブロック作用に加えて、カリウムチャネルブロック作用ももつので不応期も延長させます。

●特に注意が必要な副作用
 最も注意が必要なのは抗不整脈薬にもかかわらず、かえって不整脈を起こしやすくしてしまうことです。これを催不整脈作用といいます。Ⅰa群薬では、QT間隔の延長に伴う不整脈を起こしやすいので、心電図でQT間隔に対する作用に注意しましょう。

 また、心機能低下による心不全の悪化、心臓以外では抗コリン作用による尿閉・口渇です。個々の薬物ではシベンゾリンによる低血糖作用が有名で、糖尿病治療中の患者さんでは特に注意が必要です。

(2)Ⅰb群薬
 心房筋に対する作用はほとんどなく、心室性不整脈のみに使われます。

●特に注意が必要な副作用
 Ⅰb群薬は、催不整脈作用はあまり問題になりません。リドカインでは中枢神経作用(錯乱、浮動性めまい、けいれん)、アプリンジンでは肝障害、汎血球減少が起こることがあります。

(3)Ⅰc群薬
 ナトリウムチャネルに対する親和性が最も強く、刺激の伝導遅延作用も最も強いとされています。

●特に注意が必要な副作用
 Ⅰc群薬では、全般的にQRS間隔の延長に伴う催不整脈作用が問題となります。心電図によるQRS間隔のチェックを忘れてはなりません。また、心機能抑制による心不全の悪化が起こることがあるので、心不全の患者さんへの投与は禁忌とまではいきませんが、慎重に行う必要があります。

2.Ⅱ群薬(交感神経β受容体遮断薬)

 交感神経の支配が強い洞結節、房室結節の興奮の頻度と伝導を抑制します。そのため、交感神経が活性化される運動時に起こりやすい不整脈に対しても有効です。

●特に注意が必要な副作用
 徐脈や房室ブロックを起こすことがあります。中枢神経抑制作用があるため、うつ病の患者さんではうつ症状を悪化させることがあります。

 糖尿病の患者さんでは低血糖症状を自覚することが困難となります。
 また、カルベジロールのようにβ1受容体非選択的な薬物は、気管支喘息や間歇性跛行を誘発することがあります。喘息・高度徐脈では禁忌、耐糖能異常・閉塞性肺疾患・末梢動脈疾患は慎重投与です。

3.Ⅲ群薬(カリウムチャネル遮断薬)

 すべての心筋細胞が興奮を終えて元の分極状態に戻るのを抑え、不応期を延長することにより、抗不整脈作用を示します。主に心室性の致死的な不整脈に用いられます。
 
●特に注意が必要な副作用
 Ⅲ群薬全般でQT間隔の延長に伴う催不整脈作用が問題となることがしばしばあります。また、アミオダロンでは、間質性肺炎、肺線維症、肝機能障害、甲状腺機能亢進症・低下症などがよく知られた副作用です。間質性肺炎、肺線維症は致死的となることがあるので、呼吸困難などの自覚症状、および胸部X線写真のチェックを怠らないようにしましょう。

4.Ⅳ群薬(カルシウムチャネル遮断薬)

 カルシウムチャネルは、心室筋細胞と洞結節、房室結節細胞では役割が違うので、その作用も両者で異なってきます。 

 洞結節、房室結節細胞では、活動電位がCa2+電流によって発生するので、これを抑えると興奮の頻度と伝導の速度が抑えられます。
 
 心室筋細胞ではプラトー相で細胞内に取り込まれるCa2+を抑えることになり、これにより細胞内のCa2+濃度が低下し、収縮力も減弱します。
 
●特に注意が必要な副作用
 Ⅳ群薬では、洞結節機能抑制による徐脈、房室伝導抑制による房室ブロックなどの徐脈性不整脈を副作用とします。カルシウムチャネル遮断薬は、消化管平滑筋のカルシウムチャネルも遮断してしまうので、逆流性食道炎の悪化や便秘などの消化器系の副作用が問題となることもあります。

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