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クイズ「不眠を訴える患者にベルソムラからデエビゴへ処方変更されたのはなぜ?」

処方箋「デエビゴ」(レンボレキサント)

<今日の処方箋>
【処方1】デエビゴ[般]レンボレキサント錠2.5mg 1回1錠 1日1回 寝る前 14日分

不眠を訴える患者の背景

50歳男性。

本日、「ベルソムラ[般]スボレキサント錠10mg」1回1錠 1日1回 寝る前からデエビゴ錠(レンボレキサント)2.5mgへ変更。不眠の訴えでベルソムラ錠を前回処方してもらったものの、薬を飲んでいない時よりは入眠は早くなったが、それでも時間がかかってしまう。かつ、途中で目が覚めてしまい、朝までしっかり眠れないとのこと。

また、患者は頻脈性不整脈を患っており、「ワソラン錠40mg[般]ベラパミル塩酸塩」を1日1回1錠、朝食後に併用している。

先生から「ベルソムラ錠(スボレキサント)でなく、類似したお薬のデエビゴ錠(レンボレキサント)で試してみてみましょう。また、飲んでいる薬の関係上、デエビゴ錠は最小用量で処方します」と言われました。

クイズ「不眠を訴える患者にベルソムラからデエビゴへ処方変更されたのはなぜ?」の画像

ここで患者さんから質問が。
「あまり詳しく聞けなかったのですが、ベルソムラ錠とデエビゴ錠はどう違うのですか?それにベルソムラは10mgの他、15mg、20mgと種類があるのはネットで調べて把握しています。用量を変えずになぜ別の薬に変えるのでしょうか?また、デエビゴ錠が最小用量の処方なのはなぜですか?詳しく教えてください」

問題クイズ「不眠を訴える患者にベルソムラ錠(スボレキサント)からデエビゴ錠(レンボレキサント)へ処方変更された理由は?」

今回は、不眠症の治療でベルソムラ錠(スボレキサント)の効果が芳しくなく、デエビゴ錠(レンボレキサント)へ変更されました。医師はどのような意図でデエビゴ錠へ変更したのでしょうか?また、併用薬からデエビゴ錠を最小用量にした理由はなぜでしょうか?


解説 クリックで表示

「ベルソムラ錠(スボレキサント)」と「デエビゴ錠(レンボレキサント)」の不眠改善効果に関する解説

最初にベルソムラ錠(スボレキサント)からデエビゴ錠(レンボレキサント)になった理由について解説します。

例題の患者さんは「ベルソムラ錠を服用したら全く飲んでない時よりは入眠は早くなったが、それでも時間がかかってしまううえ、途中で目が覚めてしまい、朝までしっかり眠れない」と訴えました。

ここで、ベルソムラ錠とデエビゴ錠の作用機序について確認していきます。

両薬剤は、覚醒と睡眠リズムの調整を担うオレキシン神経伝達に作用し、過度な覚醒状態を緩和することによって、覚醒中枢と睡眠中枢のバランスを整える非鎮静作用の治療薬として使用されます。

具体的な機序として、ヒトオレキシン1受容体及びオレキシン2受容体に対し可逆的な拮抗をし、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させ、睡眠を誘発させると考えられています(オレキシン受容体は、脳内で覚醒に関与)。

ベルソムラ錠とデエビゴ錠は、オレキシン受容体の拮抗作用に違いがあります。それはデエビゴ錠の方がベルソムラ錠よりノンレム睡眠の抑制にも関与するオレキシン2受容体への親和性がより強く、速やかな入眠と睡眠維持をもたらすことが期待されます。3)

今回は、上述の期待を込めてベルソムラ錠からデエビゴ錠に切り替えた可能性が考えられます。

続いて、デエビゴ錠が最小用量の1日2.5mgとなった理由について解説します。

それは、併用薬に背景があります。実は、デエビゴ錠は患者さんが服用しているワソラン錠(ベラパミル)とは併用注意、かつ、併用する場合は1日1回2.5mgとするとの文言が添付文書に記載されています。

他にもフルコナゾール、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどもこちらに該当します。

理由は、ワソラン錠(ベラパミル)はCYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤であり、デエビゴ錠(レンボレキサント)の血中濃度を増加させ、副作用のリスクを上昇させてしまう恐れがあるためです(傾眠等の副作用が増強)。

またこちらは、デエビゴ錠に限定された話ではありません。ベルソムラ錠(スボレキサント)もCYP3Aを中等度に阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾールなど)により副作用を上昇させるリスク(傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強)があるため、ベルソムラ錠を併用する場合は、1日1回10mgへの減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること、と添付文書に記載されています。

よって、初回で処方されたベルソムラ錠も10mgで抑え、それ以上の増量はするべきではないと判断されたと考えられます。

ちなみに例題の患者さんの背景から外れてしまいますが、デエビゴ錠は併用禁忌がないもの
の、ベルソムラ錠は CYP3A を強く阻害する薬剤(イトラコナゾール/ポサコナゾール/ボリ
コナゾール/クラリスロマイシン/リトナビル/エンシトレルビル)、そして、前述の成分が含まれている配合薬で、ボノサップ(ボノプラザン・アモキシシリン・クラリスロマイシン)/ラベキュア(ラベプラゾール・アモキシシリン・クラリスロマイシン)/パキロビッド(ニルマトレルビル・リトナビル)が併用禁忌となっています。

調剤時には注意すべきポイントであることを忘れないようにしましょう。

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