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マクロライド少量長期投与について

マクロライド少量長期療法とは、14員環マクロライド系抗生物質を通常量の半量で長期間(数ヶ月から数年)内服する治療法です。主に慢性副鼻腔炎や滲出性中耳炎などの治療に用いられ、抗炎症作用や免疫調整作用などを期待して行われます。


抗菌薬は主に感染症等に用いられますが、マクロライド系抗菌薬は抗菌作用だけではなく、抗炎症作用や免疫調整作用、バイオフィルム(菌膜:この存在により、抗菌薬の感染局所移行性が低くなる)の産生抑制作用、喀痰成分のムチン産生抑制などさまざまな効果が報告されています。また、一般的に抗菌薬はウイルス性の疾患には効果がないと言われますが、免疫調整作用を持つマクロライド系抗菌薬を抗インフルエンザ薬と併用投与することにより、インフルエンザの再感染率上昇を有意に抑制できるという報告や、特にクラリスロ マイシンには、気管上皮細胞における季節性A型インフルエンザウイルスの感染を抑制する効果の報告があります

 新型インフルエンザの重篤化の原因としては、サイトカインストーム(サイトカインの過剰産生)が注視されている。宿主側の異常な過剰反応により病態が急激に悪化していくわけだが、マクロライド療法はこの過剰反応を抑えることで重篤化を防げる可能性があるわけだ。

 佐藤氏は、インフルエンザの感染が確認されてからもマクロライド療法(抗インフルエンザ薬との併用療法)の有効性が確認されつつあるとし、「新型インフルエンザの重症例の治療では、マクロライド療法も選択肢に加えるべき」と話している。

詳細:

  • 14員環マクロライド系抗生物質:エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシンなどが含まれます.
  • 少量投与:通常の抗生物質投与量よりも少ない量(半量程度)を投与します.
  • 長期投与:数ヶ月から数年、長期間に渡って内服します.
  • 主な疾患:慢性副鼻腔炎、滲出性中耳炎、びまん性汎細気管支炎などが挙げられます.
  • 効果:抗炎症作用、免疫調整作用、細菌のバイオフィルム形成抑制など、抗菌作用以外にも期待できる効果があります.
  • 重篤な副作用の少ない:少量を長期投与するため、重篤な副作用が少ないとされています.
  • 耐性菌の出現:長期投与による耐性菌の出現も考慮する必要があります。
  • 慢性副鼻腔炎に対するマクロライド療法のガイドラインでは、成人は1日エリスロマイシン400~600mg、またはクラリスロマイシン200mg、またはロキシスロマイシン150mg、小児は1日エリスロマイシン10mg/kg、またはクラリスロマイシン5mg/kgを基準として症例により適宜増減する。

本剤は、肝代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4阻害作用を有するため、相互作用を生じる可能性のある薬剤が非常に多いです。特にピモジド、エルゴタミン含有製剤、タダラフィル〔アドシルカ〕とは併用禁忌です(同成分のシアリスはアドシルカと用法・用量が異なることから併用注意)。また、天然ケイ酸アルミニウム(アドソルビン)と併用することで、本剤の吸収が低下するとの報告があります。少し時間をあけて服用するように指導する必要があります。他科での併用薬について必ず確認し、相互作用をチェックしましょう。

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