Q1:錠剤を粉砕しても、散剤が市販されていれば必ず算定不可ですか?
基本的には算定不可ですが、ごく稀に算定可能なケースもありえます。
自家製剤加算の算定要件の一つに、以下があります。
自家製剤加算の算定要件(イ)
算定要件_イ
当該加算に係る自家製剤とは、個々の患者に対し薬価基準に収載されている医薬品の剤形では対応できない場合に、医師の指示に基づき、容易に服用できるよう調剤上の特殊な技術工夫を行った次のような場合であり…
つまり、散剤があるのであれば、「薬価基準に収載されている医薬品の剤形では対応出来ない場合」に該当しないので、算定は不可ということになります。
ただし、ごく稀だと思いますが、散剤では対応出来ずに錠剤を粉砕する必要があるケースもあると思われ、以下のケースなどが該当します。
錠剤を粉砕する必要があるケース
- 散剤よりも錠剤を粉砕した方が服用量を少なくできるため、飲みやすくなる
(例:散剤だと1回1g服用が必要なのに対して、錠剤粉砕だと1回0.5gの服用で良い等) - 散剤が顆粒状であり、錠剤を粉砕して細粒状にした方が服用しやすい
ケースとしては極めて稀だとは思いますが、患者によっては散剤が市販されていても、錠剤を粉砕した方がよいケースにおいては、算定可能と考えられます。
その際は、レセプトに、錠剤を粉砕すべきと判断した理由をしっかりと残しておきましょう。
Q2:成人へ賦形剤や矯味剤を加える場合も算定可能か?
このご質問も非常に多く受けます。
結論としては算定可です。
算定要件上は以下の通りであり、賦形剤や興味剤を加えて算定出来るのは、6歳未満に限られるように読み取れます。
自家製剤加算の算定要件(ケ)
算定要件_ケ ※一部要約
通常、成人又は6歳以上の小児に対して矯味剤等を加える必要がない薬剤を6歳未満の乳幼児に対して調剤する場合において、保険薬剤師が必要性を認めて、処方医の了解を得た後で、単に矯味剤等を加えて製剤した場合であっても算定できる。
この部分は平成24年から変更がないのですが、実は、平成24年の疑義解釈で、成人や6歳以上の小児においても算定可であることが示されています。
平成24年の疑義解釈(問2)
(問2) ※一部要約
自家製剤加算又は計量混合調剤加算については、従来どおり、成人又は6歳以上の小児のために矯味剤等を加えて製剤した場合や微量のために賦形剤・矯味矯臭剤等を混合した場合にも算定できるという理解でよいか。
(答)そのとおり
引用元:厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その8)_事務連絡平成24年8月9日 」
以上のことより、成人や6歳以上の小児に対して、賦形剤や矯味剤等を加えるケースにおいても算定は可能となります。
注意点としては、処方医の了解を得ることはもちろん、患者毎に賦形剤・矯味矯臭剤等の混合が必要かどうかを判断することが求められます。
Q3:入手困難で算定する場合は、特定薬剤管理指導加算3-ロも同時算定可?
この点は明確に示されているわけではないですが、自家製剤加算と特定薬剤管理指導加算3-ロの趣旨を踏まえると、同時算定可と考えています。
一例として、アスベリン錠10が入手困難で、アスベリン錠20を半錠にする場合を考えてみます。(薬品名はあくまで一例です。入手困難かどうかはメーカーサイト等でご確認ください)
自家製剤加算と特定薬剤管理指導加算3-ロが同時算定可能になるケース(例)
(筆者作成)

令和6年度改定では、供給上の問題により医薬品が入手困難な場合には、同一剤形・同一規格の医薬品があっても、自家製剤加算を算定出来ることになりました。
2024年(令和6年)調剤報酬改定「自家製剤加算」について

引用:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」令和6年3月5日版
自家製剤加算は薬剤調製料の加算ですので、半錠という薬剤調製に対する加算である点を押さえておきましょう。
また、特定薬剤管理指導加算3-ロは以下の場合に算定可能です。
特定薬剤管理指導加算3-ロが算定可能な場合
医薬品の供給の状況が安定していないため、調剤時に前回調剤された銘柄の必要な数量が確保できず、前回調剤された銘柄から別の銘柄の医薬品に変更して調剤された薬剤の交付が必要となる患者に対して説明を行った場合
こちらは服薬管理指導料の加算ですので、患者さんへの状況説明に対する加算となります。
ここまでで分かるとおり、自家製剤加算と特定薬剤管理指導加算3-ロは趣旨が異なりますので、同時算定は可能であると考えています。
なお、特定薬剤管理指導加算3-ロは、最初に処方された1回に限り算定可能となります。毎回算定出来るわけではない点は注意しておきましょう。
補足:要件上、記録が求められているものを押さえよう
よく個別指導で指摘を受ける点ですが、自家製剤加算の要件の一つに「製剤工程の調剤録等への記載」があります。
自家製剤加算の算定要件(コ)
算定要件_コ
自家製剤を行った場合には、賦形剤の名称、分量等を含め製剤工程を調剤録等に記載すること。
調剤録等への記載ですので、レセプトへの記載までは求められていないのですが、漏れやすい点ですので改めてご注意頂ければと存じます。
製剤工程の記載例を以下にお示しします。ご参考になれば幸いです。
製剤工程の記載例
例1)粉砕後、乳糖を5g賦形し、1包あたり0.2gとした
例2)割線に沿って半錠し、半錠毎に分包した