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特定薬剤管理指導加算1とは?

特定薬剤管理指導加算1とは

特定薬剤管理指導加算1は、対人業務を評価する薬学管理料のうち、服薬管理指導料及びかかりつけ薬剤師指導料にかかる項目です。ハイリスク薬と呼ばれる薬に関して、通常の服薬指導に加え、疾患の治療状況に応じた服薬管理の徹底や副作用発生時の対応方法などの個別に必要とされる指導をおこなうことで算定が可能です。

ハイリスク薬とは

ハイリスク薬とは、「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」において、以下の3つの分類によって定義されています。

Ⅰ. 厚生労働科学研究「『医薬品の安全使用のための業務手順書』作成マニュアル(平成19 年3月)」において「ハイリスク薬」とされているもの
Ⅱ. 投与時に特に注意が必要と考えられる治療領域の薬剤
Ⅲ. 投与時に特に注意が必要と考えられる性質を持つ薬剤 

ただし、ここに含まれるすべての薬が特定薬剤管理指導加算1の対象になるわけではなく、算定対象として定められたもののみです。対象薬については後ほど詳しく解説していきます。

特定薬剤管理指導加算1の算定要件

特定薬剤管理指導加算1の算定要件は、以下のように定められており、必要な施設基準はありません。

算定対象薬剤

特定薬剤管理指導加算1はハイリスク薬が算定対象ですが、先ほども述べた通り、そのすべてではありません。以下の厚生労働省が定める「特に安全管理が必要な医薬品」であり、厚生労働省のホームページからも一覧を確認することも可能です。

【特に安全管理が必要な医薬品】

  • 抗悪性腫瘍剤
  • 免疫抑制剤
  • 不整脈用剤
  • 抗てんかん剤
  • 血液凝固阻止剤(内服薬)
  • ジギタリス製剤
  • テオフィリン製剤
  • カリウム製剤(注射薬に限る。)
  • 精神神経用剤
  • 糖尿病用剤
  • 膵臓ホルモン剤
  • 抗HIV薬

算定対象患者と点数

特定薬剤管理指導加算1の算定対象となるのは、ハイリスク薬が処方となっており、以下の条件を満たす患者です。新規処方か継続処方かによって2区分に分かれており、どちらかに当てはまる場合は処方箋受付1回につき1回のみ算定可能です。

イ:ハイリスク薬が新たに処方された患者へ必要な指導を行った場合 10点
ロ:次のいずれかに基づき、保険薬剤師が必要と認めて指導を行った場合 5点
  ・ハイリスク薬に係る用法又は用量の変更
  ・ハイリスク薬に係る副作用の発現状況、服薬状況等の変化

※イについて、自薬局での調剤が初めてでも他薬局からの継続の場合は算定不可。
イとロは併算定不可。1枚の処方箋に複数のハイリスク薬が処方となり、イとロどちらの条件も満たす場合でもどちらか一方のみ算定を行う。

特定薬剤管理指導加算1算定時の留意事項

対象となる疾患の確認が必須

ハイリスク薬が処方となった場合は、必ず何の疾患に対しての処方なのかを確認しましょう。特に適応となる疾患が複数ある薬には注意が必要です。厚生労働省が定める「特に安全管理が必要な医薬品」に定められている薬効分類かどうかを確認した上で、特定薬剤管理指導加算1を算定するようにしましょう。

例えばフォシーガの場合、糖尿病の治療目的で処方になっている場合は算定できますが、慢性心不全、慢性腎臓病に対しての場合は算定できません。

【適応症が複数ある医薬品の例】

薬品名算定対象疾患算定非対象疾患
フォシーガ糖尿病慢性心不全、慢性腎臓病
ベンザリンてんかん不眠症、麻酔前投薬
サインバルタうつ病糖尿病性神経障害、慢性疼痛

確認・指導した内容を薬歴に記載する

特定薬剤管理指導加算1の算定において、対象となる医薬品に関して適切な確認・指導を行った場合は、その内容について薬歴に適切に記載することが重要です。

特定薬剤管理指導加算2・3との違い

特定薬剤管理指導加算には、1の他に2・3があります。どちらの項目もリスクが高い薬や、丁寧な説明が必要な薬が処方されている患者に対しての薬学的管理の評価という点では、特定薬剤管理指導加算1と共通していると言えます。しかし、それぞれ算定要件が異なりますので、以下で違いを確認していきましょう。

【特定薬剤管理指導加算2・3の主な算定要件】

特定薬剤管理指導加算2特定薬剤管理指導加算3
対象患者抗悪性腫瘍剤を注射された
悪性腫瘍患者
イ 処方内容に対してRMPを用いた
  指導を受けた患者/新たに発出された
  イエローレター・ブルーレターに関
  して指導を受けた患者
ロ 選定療養の説明や流通不安定のため
  変更の必要性がある旨の説明を受け
  た患者
対象薬剤内服の抗悪性腫瘍剤やその他
指示療法の薬
イ 患者向けRMPがある薬剤
ロ 選定療養の対象となる先発医薬品/流
  通不安定の薬剤
算定点数100点5点
算定頻度月に1回まで当該医薬品に関して最初に
処方された1回
医師への情報提供ありなし
特定薬剤管理指導加算1
との併算定
条件を満たせば可能条件を満たせば可能

特定薬剤管理指導加算1の算定処方例

ここからは特定薬剤管理指導加算1をどのような処方で算定できるのか、算定点数の区分ごとに具体例をみていきましょう。

処方例:特定薬剤管理指導加算1のイ

患者情報:50歳、男性
2型糖尿病の診断を受け、今回から服用開始

メトホルミン錠250mg 2錠 分2 朝・夕食後

【ポイント】
ハイリスク薬である糖尿病用薬が新たに処方されており、必要な指導を行った場合は特定薬剤管理指導1のイ(10点)が算定可能です。
糖尿病用薬が初めて処方となった場合は、以下のような点を指導すると良いでしょう。
・メトホルミンの用法・用量
・シックデイ時の対処法
・低血糖の際に現れる症状、対処法

処方例2:特定薬剤管理指導加算1のロ

患者情報:75歳、女性
下肢静脈血栓症に対しワーファリンを継続服用中今回用量の変更あり

〈前回処方〉
ワーファリン錠1mg 1錠 分1 朝食後
〈今回処方〉
ワーファリン錠2mg 2錠 分1 朝食後

【ポイント】
ハイリスク薬であるワーファリンを継続服用中。今回の処方でワーファリン錠1mg→2mgに増量。用量の変更があった処方に対し、薬剤師が必要な指導を行った場合、特定薬剤管理指導加算1のロ(5点)が算定可能。
指導のポイントは以下の通りです。

増量により出血傾向が高まる可能性があるため、あざや歯茎からの出血等に注意すること
・引き続き納豆や青汁といったビタミンKが多く含まれているものは控えること
・検査や手術・抜歯等の予定があるときは早めに主治医に伝えること

ハイリスク薬にはさまざまな薬が含まれますが、種類ごとの指導のポイントをおさえて重要な内容を指導・確認していくことが大切です。

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