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整腸剤の違いを菌種別に解説【薬剤師向け】

整腸剤とは酪酸や乳酸などを産生することで腸内pHを低下させ、有害細菌の増殖を抑えるとともに有用菌の増殖を促す製剤です。大きく生菌製剤と耐性乳酸菌製剤に分けられます。生菌製剤は同一の適応で、製剤同士を直接比較した臨床試験は行われておりません。

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整腸剤の成分の違い

整腸剤はいくつかの菌種に分けられます。

ビフィズス菌

ラックビー錠、ラックビー微粒N、ビオフェルミン錠剤、ビオフェルミン散剤、ビフィズスゲン散
→乳酸と酪酸を産生します。ビオフェルミン散剤は2022年12月に発売され始めたばかりの製剤です。

ラクトミン(乳酸菌)

アタバニン散、ビオラクト原末、ビオヂアスミンF-2散、ラクトミン散、ラクトミン末
→乳酸を産生し、その能力は高いです。

酪酸菌(宮入菌)

ミヤBM錠、ミヤBM細粒
→酪酸の産生能が高い菌で、酢酸と酢酸を産生します。芽胞を形成するため胃酸や胆汁酸などの影響を受けることなく腸に到達することができます。

ビフィズス菌+ラクトミン

ビオスミン配合散、レベニンS配合錠、レベニンS配合散
→ビフィズス菌とラクトミンを配合していることにより幅広く作用します。

ラクトミン+糖化菌

ビオフェルミン配合散
→糖化菌はもともと腸内にいるビフィズス菌を増殖させたり、乳酸菌の増殖を促進させたりするサポートの役割があります。具体的には、乳酸菌に糖化菌を混ぜると、乳酸菌単独の場合と比較して10倍以上増殖すると言われています。また、酪酸菌同様、芽胞を形成するので胃酸などの影響を受けずに腸まで到達することが可能です。

ラクトミン+酪酸菌+糖化菌

ビオスリー配合錠、ビオスリー配合OD錠、ビオスリー配合散
→糖化菌が乳酸菌の増殖を促進し、乳酸菌が酪酸菌の増殖を促進することで相乗効果が期待できます。

耐性乳酸菌

ラックビーR散(ビフィズス菌)、ビオフェルミンR錠(フェカリス菌)、ビオフェルミンR散(フェカリス菌)、レベニン錠(ビフィズス菌+アシドフィルス菌+フェカリス菌)
→ラックビーR散はこれまで牛乳アレルギーに禁忌でしたが、製造工程で使用されていた牛乳由来成分が糖成分に変えられたことによって、2022年6月から禁忌ではなくなりました。現在、整腸剤の中で牛乳アレルギーがあるのはエンテノロンR散と耐性乳酸菌散10%「トーワ」ですが、いずれも販売中止が決まっているので牛乳アレルギーに禁忌の整腸剤は今後存在しなくなります。

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整腸剤の適応の違いと使い分け方法

生菌製剤はどれも「腸内菌叢の異常による諸症状の改善」という適応で共通しています。一方、耐性乳酸菌製剤は「“抗菌薬、化学療法剤投与時の”腸内菌叢の異常による諸症状の改善」となっており、該当する薬と併用して使用します。

該当する薬というのはペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系(ビオフェルミンR、レベニンのみ)、ナジリクス酸です。つまり、ニューキノロン系とビオフェルミンRが処方されているような場合、保険請求が通らない可能性があるということです。

また、酪酸菌も抗菌薬に耐性があるため酪酸菌を含有しているミヤBMやビオスリーも抗菌薬と一緒に処方される場合があります。

消化管部位に対する親和性の違い

菌種によって増殖する部位が異なります。

  • ビフィズス菌:小腸下部〜大腸
  • ラクトミン:小腸〜大腸
  • 酪酸菌:主に大腸
  • 糖化菌:小腸上部

ウイルス性の胃腸炎では小腸に、細菌性の下痢では大腸に感染していることが多いため、それぞれに合った部位に作用する製剤を選ぶというのも薬剤選択方法の1つになります。

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