- PPI(プロトンポンプ阻害薬)を長期連用した際に、骨粗しょう症や骨折が起こりやすくなる理由
- 骨粗しょう症や骨折リスクが気になる場合の“代替薬”、ボノプラザンの扱い
PPIの長期使用と骨粗しょう症・骨折リスクの関係
PPIの服用と「骨密度の低下」や「骨折リスクの上昇」が関連することは、多くの研究で報告されています3,4)。
詳しいメカニズムはわかっていませんが、PPIの累積使用量が多いほど骨折リスクが上昇する3)、低用量や短期使用でもリスク上昇が観察されている4)といった点を踏まえると、PPIが持つ何らかの薬理作用が影響していると考えられます。
実際、胃酸分泌が抑えられることで腸管からのカルシウム吸収が阻害される、PPIが破骨細胞に作用して骨形成が阻害される、といった可能性も示唆されています。そのため、骨折リスクが問題になる人、特に閉経後の女性などにPPIが継続処方されているような場合には、通常よりも注意深く対応を考える必要があります。
骨粗しょう症や骨折リスクが気になる場合のPPIの“代替案”とは?
こうした骨に対する影響は、同じ胃酸分泌抑制薬でも「H2ブロッカー」では小さい3,4)ことがわかっています。PPIを継続使用したいのは、基本的に“強力な胃薬”が続けて必要な時で、胃粘膜保護薬のような作用のやさしめな薬では対応できないことがほとんどです。そういった場合、PPIをH2ブロッカーに切り替えるというのも選択肢になります。
ただし、H2ブロッカーを高齢者に使用する場合は、腎機能に応じてしっかりと用量調節(減量)を行うことが大切です。
腎機能が低下しているにもかかわらず通常量でH2ブロッカーを使うと、血中濃度の上昇によってせん妄などの中毒症状を起こすリスクが大幅に高くなる5)からです。
PPIの副作用を避ける目的で薬を変更したのに、変更した先の薬で副作用を起こす、という本末転倒の事態は避けられるように注意してください。
また、PPIやH2ブロッカーといった強力な薬が必要でなくなってきた時点で、胃粘膜保護薬や漢方薬といった薬への切り替えも考慮することも忘れないようにしてください。
「ボノプラザン」とPPIの違いは?骨粗しょう症・骨折に関連するのか?
「ボノプラザン」は「P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)」に分類されることもある胃酸分泌抑制薬ですが、大きな作用メカニズムとしてはPPIと共通しています。
現状、「ボノプラザン」の長期連用が実際に骨粗しょう症や骨折リスクと関連する、という報告はありませんが、基本的な作用メカニズムは同じである以上は同様の注意が必要だと考えるのが妥当です。
実際、「ボノプラザン」の添付文書にも骨折リスクの上昇に関する注意喚起は、「15.その他の注意」の項目に記載されています6)。