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防腐剤無添加のPF点眼液と防腐剤入りの点眼液、一般名処方の場合の注意点

診療報酬・調剤報酬に関するクイズを解説つきでご紹介する人気シリーズ。
今回のクイズは『ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」で調剤できる?』です。

問題「【般】ヒアルロン酸Na点眼液0.1% 5mL」の一般名処方は、『ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」』で調剤できる?


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  • Aできる

今回ピックアップする項目は?「点眼液の一般名処方」

同じ有効成分の点眼液でも、防腐剤の入った通常の点眼液と、防腐剤無添加のPF点眼液の2種類が存在するケースがあります。一般名処方で処方箋が書かれている場合、どちらで調剤しても良いことになります。

【解説の前に】一般名処方のルール

一般名処方とは、医師が処方をおこなう際に、先発医薬品か後発医薬品かという銘柄にこだわらずに記載したものです。そのため、薬剤師は先発医薬品と後発医薬品のどちらでも調剤できます。

処方箋には、【般】+「一般的名称」+「剤形」+「含量」という形式で記載されています。「一般的名称」は、添付文書における有効成分を使用することが多いですが、場合によってはこれをもとにした既収載品の販売名が用いられます。

クイズの解説

診療報酬上の後発医薬品に該当する「PF点眼液」は、一般名処方の際に選択することができます(参考:ロートニッテン「医療関係者の皆様:よくあるご質問」)。

一般名で書かれた薬を調剤する際、外用薬の場合は処方医への確認なしに剤形を変更することはできませんが、「点眼液」と「PF点眼液」は別剤形ではなく、同じ「点眼液」という扱いになっているからです。

PF点眼薬(防腐剤無添加)とは

PFとは“Preservative Free”(防腐剤無添加)の頭文字から命名されたものです。

通常、点眼剤は無菌製剤ですが、開封後にくり返し使用されることで細菌などによって汚染されることがよくあります。こうした汚染を防ぐため、通常は「塩化ベンザルコニウム」などの防腐剤が添加されています。しかし、こうした防腐剤による角膜障害やアレルギーなどが問題になるケースがあるため、“防腐剤なしでも汚染されない容器に入れた点眼液”として開発されたのがPF点眼液です。

PF点眼薬の使い方と注意点

PF点眼液はフィルターが付いた特殊な容器を使用しているため、はじめに開栓操作が必要です。キャップを閉めたまま上向きにして持ち、容器の中央にある丸いマークを強く押します。容器内部のインナープラグが外れ、点眼可能になります。

点眼時は丸いマークを親指で押さえながらゆっくりと力を入れることで、薬液がフィルターを通って出てきます。少し力を加える必要があるため、高齢者や力が入りづらい方には使用方法について一度確認するとよいでしょう。

一般的な医療用点眼薬と同様に開封後は4週間以内に使用してください。また、薬液が出にくい場合でもノズルの穴を針などでつかないでください。フィルターが破損するおそれがあります。

点数を計算してみよう!

具体的な例を用いて、計算してみましょう。

(処方例)
Rp1)【般】ヒアルロン酸Na点眼液0.1%
      5mL   1瓶
      両眼 1日4回

一般名処方なので「先発医薬品」でも「後発医薬品」でも調剤できます。
外用の薬剤調整料は10点、調剤管理料は4点です。薬剤料は1調剤分で計算します。

  • 『ヒアレイン点眼液0.1%』の場合
     薬価:245.40円(点数で24.54点)
     薬剤料:五捨五超入で考えるので、25円
  • 『ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%「ニッテン」』の場合
    薬価:94.50円(点数で9.45点)
     薬剤料:五捨五超入で考えるので、9円
  • 『ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」』の場合
    薬価:188.80円(点数で18.88点)
    薬剤料:五捨五超入で考えるので、19円

「先発医薬品」の『ヒアレイン点眼液0.1%』の場合が、10+4+25=39点。
「後発医薬品」の『ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%「ニッテン」』の場合が、10+4+9=23点、『ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」』の場合が、10+4+19=33点。

「後発医薬品」はPF点眼液と通常の点眼液で点数が変わってしまうので注意が必要です。

こんな類似事例にも注意しよう!

以下の場合は変更調剤できるかどうか、考えてみましょう。

問題①『トラニラスト点眼液0.5%「サワイ」』を『トラメラスPF点眼液0.5%』で調剤


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  • Aできない

『トラメラスPF点眼液0.5%』は「先発医薬品」です。「後発医薬品」から「先発医薬品」への変更調剤はできません。PF点眼液は「後発医薬品」というイメージがあるかもしれませんが、「先発医薬品」も存在するので注意が必要です。

問題②『ラタノプロスト点眼液0.005%「NP」』を『ラタノプロスト点眼液0.005%「サワイ」』で調剤


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  • Aできる

『ラタノプロスト点眼液0.005%「NP」』と『ラタノプロスト点眼液0.005%「サワイ」』はどちらも「後発医薬品」で薬剤料は同じです。「後発医薬品」から「後発医薬品へ」の変更は薬剤料が同額以下であれば変更できるので、調剤できます。

ですが、『ラタノプロスト点眼液0.005%「NP」』はPF点眼液と同じ防腐剤無添加の点眼液です。意図的に防腐剤無添加の点眼液が処方されている場合があるので注意が必要です。

柳田さんからのアドバイス

PF点眼液は、容器が特殊で、名称も「PF点眼液」と通常の点眼液とは異なる剤形のように感じてしまうかもしれませんが、同じ「点眼液」です。工夫がされているという点で考えるとOD錠と普通錠のような感覚にもなりますが、剤形においては同じ「点眼液」なので、剤形変更の可否について考える必要はありません。先発医薬品から後発医薬品、後発医薬品から後発医薬品への変更も同様で、薬剤料が同額以下であればPF点眼液へ変更できます。

ただし、PF点眼液から通常の点眼液へ変更する際には、処方意図がある可能性があるので注意が必要です。防腐剤無添加であることから、コンタクトレンズ着用のまま点眼できるものとして処方されている場合もあります。

医師が「PF点眼液」を想定して処方していても、一般名処方では、その意図が伝わらず、薬局では通常の点眼液を調剤してしまうといったこともあるかもしれません。患者さんによっては「PF点眼液でなければ困る」場合もあるので、防腐剤アレルギーの有無やコンタクトレンズの使用状況等、確認しておくと良いと思います。

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