神社解説

「濫用等のおそれのある医薬品」とは?

「濫用等のおそれのある医薬品」とは、一般用医薬品(市販薬)のうち、適正な使用量を超えて濫用されるリスクがあり、過剰摂取を防ぐために「販売できる数量」や「購入時の理由確認」などが定められているもののことです。

まずはその定義や指定範囲拡大の内容、販売ルールについて見ていきましょう。

「濫用等のおそれのある医薬品」の定義

2024年2月現在、下記の指定された6成分を含む医薬品が「濫用等のおそれのある医薬品」として定義されています。

▼「濫用等のおそれのある医薬品」となる6成分の一覧表

以下に掲げるもの、その水和物およびそれらの塩類を有効成分として含有する製剤
・エフェドリン
・コデイン
・ジヒドロコデイン
・ブロムワレリル尿素
・プソイドエフェドリン
・メチルエフェドリン

出典:厚生労働省『濫用等のおそれのある医薬品について』

「濫用等のおそれのある医薬品」の指定範囲拡大について

「濫用等のおそれのある医薬品」は、2013年の薬事法改正における医薬品販売制度の見直しで厚生労働省により定められました。

当初は下記成分を含むものが指定されていましたが、2023年2月8日に『薬生発0208第1号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知』で指定範囲拡大が通知され、2023年4月1日からは下記の太字部分は一部削除となっています。

・エフェドリン
コデイン(鎮咳去痰薬に限る) ⇒コデイン
ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る) ⇒ジヒドロコデイン
・ブロムワレリル尿素
 ・プソイドエフェドリン
メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内用液剤に限る) ⇒メチルエフェドリン

出典:厚生労働省『「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第十五条の二の規定に基づき濫用等のおそれのあるものとして厚生労働大臣が指定する医薬品」の改正について』

この指定範囲拡大により、かぜ薬(総合感冒薬)が規制の対象となりました。

日本チェーンドラッグストア協会では、対象品目が456から1275に大幅に拡大したという試算を発表しています(品目数は2022年9月時点)。

具体的には、「濫用等のおそれのある医薬品」として下記があげられます。

カテゴリ商品名の一例
風邪薬パブロン、ベンザブロック、コンタック、
エスタックイブ、カコナール、ジキニン、
ルル、改源、ストナ等
咳止めミルコデA、エスエスブロン、アネトン、
ペリコデ、トニン、浅田飴等
鼻炎薬アルガード、プレコール等
鎮静剤ウット等
痛み止めナロンエース、こども用バファリン等

出典:新経済連盟『医薬品販売制度の見直しについて/濫用等のおそれのある一般用医薬品について』

販売ルール(対面・インターネット販売共通)

「濫用等のおそれのある医薬品」は、リスク区分に合わせた情報提供などに加えて、下記のような購入者情報の確認事項や購入できる個数などが販売ルールとして定められています。

以下を確認し、資格者(薬剤師または登録販売者)が適正と判断した場合に限り販売する。
① 購入者が若年者(中学生、高校生等)である場合は、氏名及び年齢とともに、使用状況を確認
② 購入者が同じ医薬品を他店で購入していないか、既に所持していないかなどを確認
③ 購入できるのは原則1人1包装。複数個の購入希望がある場合は、理由や使用状況などを確認し、問題ないと判断した場合に限り販売可能
④ その他適正な使用を目的とする購入であることを確認するために必要な事項

出典:新経済連盟『医薬品販売制度の見直しについて/濫用等のおそれのある一般用医薬品について』

以上を、販売に携わる登録販売者は必ず理解しておきましょう。

▼参考サイトはコチラ
厚生労働省『濫用等のおそれのある医薬品について』

「濫用等のおそれのある医薬品」にかかわる問題点について

「濫用等のおそれのある医薬品」にかかわる問題点について

この指定範囲拡大の背景には、「濫用等のおそれのある医薬品」などを意図的に過剰摂取する「オーバードーズ(Overdose/OD)」の急増が一因としてあります。

次では、濫用等のおそれのある医薬品にかかわる問題点について説明します。

インターネットにおける医薬品の不適切販売

「濫用等のおそれのある医薬品」には原則1人1包装単位という販売ルールが定められています。

しかしインターネット販売では、「質問などされずに(複数個)購入できた」といったように、販売ルールが守られていないケースも見られます。

誰でも簡単に購入できるからこそ、インターネット販売は医薬品濫用を助長しやすいと言えます。

▼参考サイトはコチラ
厚生労働省『令和4年度医薬品販売制度実態把握調査結果』

若年者の市販薬乱用(オーバードーズ)の増加

「濫用等のおそれのある医薬品」は、以前より誤った使い方による依存や中毒が問題視されてきました。

とくに近年では、10代など若者のオーバードーズ(市販薬の過剰摂取)が社会問題として注目を集めています。

総務省消防庁と厚生労働省の調査によると、2023年1月~6月におけるオーバードーズが原因と思われる救急搬送者数は5,625人に上り、そのうち20代が1,742人(31%)、10代が846人(15%)と半数近くを占めます。

また、全体の7割が女性(4,132人)となっていることも特徴と言えるでしょう。

-神社解説