神社解説

ギリシャ危機とは?

当時のギリシャでは、公務員の数が労働人口の4分の1もの割合を占めている状況でした。また年金制度についても、55歳頃からの早期受給が可能であったり、所得代替率(リタイア前の給与に対する割合)が90%を超えているなど、かなり恵まれた仕組みになっていました。(所得代替率についてはドイツの約2倍、わが国の約3倍にも相当します。)こうした事情が危機の下地となっていました。

事の発端は、2009年10月の新民主主義党から全ギリシャ社会主義運動への政権交代でした。これを機に、旧政権により財政赤字が隠蔽されていたことが明らかになったのです。このため新政権(パパンドレウ氏)から財政健全化計画が発表されたのですが、経済成長率などの点において楽観的な内容だったため、ギリシャ国債が格下げされることとなりました。同時に、同国への融資額が大きいドイツ国債の価格や通貨ユーロが下落し、ギリシャと同じように財政赤字の大きいイタリアやスペインなどの南欧諸国の国債価格も下落しました。当時、財政に不安のあるこれらの国の頭文字を取ってPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)という言葉も話題になりました。これに対しIMF(国際通貨基金)やEU(欧州連合)は金融支援を決定したものの、その条件としてギリシャに増税・年金改革・公務員改革・公共投資削減・公益事業民営化など、厳しい緊縮財政・構造改革を求めました。

民主主義・社会主義

「民主主義」とは

民主主義は、政治体制の一つであり、基本的な意思決定を全ての国民の投票によって行う、あるいは国民の選出した代表者によって行うシステムを言います。

「社会主義」とは

社会主義とは、資源や生産手段を共同体(国家や社会全体)が所有し、平等に分配することで社会の公正と平等を実現しようとする思想です。社会主義の根本的な目的は、階級差のない平等な社会を確立すること、および利潤追求による個人的な資産の蓄積による貧富の差をなくすことです。したがって、社会主義では生産手段や財産、資源を個々の人々が私有する資本主義に対する代替として提案されています。

機後のギリシャ社会

ギリシャはこの条件を受け入れ、財政健全化を進めましたが国民負担も大きく、景気も大きく落ち込む結果となりました。法案の議会通過に際しては、大規模なデモや暴動が頻発するなど、その過程は簡単なものではありませんでしたが、各国の協力もありギリシャは危機を乗り越え、2014年にはパパデモス政権のもと実質GDP成長率もプラスに転じました。しかしながら国民は負担増に耐えられなくなっており、2015年の総選挙において急進左派連合(SYRIZA)のチプラス氏が政権を奪取しました。同政権はポピュリスト政党、すなわち一般大衆の支持のもと体制側や知識人に批判的な政党であり、反緊縮や既存政治の刷新を訴え、民意を得ました。しかし同政権も早々にEUとの交渉に行き詰まったため、公約に反し年金カットや増税などの緊縮財政を実施しました。この結果、2018年8月、全ての金融支援プログラムを終了させましたが代償は大きく、同政権は国民の支持を失い、2019年7月、総選挙により新民主主義党が勝利し、約4年半ぶりに政権交代が実現しました。

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