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コルヒチンの効果や副作用・注意点を医師が解説【痛風発作薬】

コルヒチンは、主に痛風発作の治療(痛みを和らげる)や、痛風発作が起きるのを予防するために使われる飲み薬です。また、まれな病気ですが、家族性地中海熱という病気の治療にも用いられます。

その歴史は古く、イヌサフランという植物から抽出される成分が元になっています。痛風発作の特効薬とも言われることがありますが、その効果の反面、使い方を間違えると重い副作用(コルヒチン中毒)を引き起こす可能性があるため、非常に注意が必要なお薬でもあります。

コルヒチンの成分

コルヒチンの主役は、コルヒチンという成分です。
では、このコルヒチンは、私たちの体の中でどんな風に働いて、痛風発作の激しい痛みや炎症を和らげてくれるのでしょうか?

①白血球の暴走をストップ
痛風発作は、血液中の尿酸値が高い状態が続くことで、尿酸の結晶が関節などにたまり、それを白血球が異物とみなして攻撃することで激しい炎症が起こります。コルヒチンは、この白血球が炎症の場所に集まってきたり、炎症を引き起こす物質を放出したりするのを抑える働きがあります。つまり、炎症の火種を大きくしないように、白血球の過剰な働きを「待った!」と止めてくれるイメージです。

②炎症を悪化させる物質の産生を抑える
その他にも、炎症に関わる様々な物質の産生を抑えることで、炎症反応全体を鎮静化するのを助けます。

このように、コルヒチンは、痛風発作の炎症のメカニズムに直接働きかけることで、つらい症状を和らげてくれるのです。ただし、血液中の尿酸値を下げる効果はないため、痛風の根本治療には尿酸値を下げるお薬が別途必要になります。

コルヒチンの効果

  • 痛風発作時の激しい痛み、腫れ、赤みなどの炎症症状を和らげる
  • 痛風発作が繰り返し起こるのを予防する
  • 家族性地中海熱の発作を予防する、症状を軽くする

特に痛風発作に対しては、「発作の予兆期(なんとなく関節がムズムズする、違和感があるなど、本格的な痛みが来る前の段階)」に飲むことで、発作を未然に防いだり、軽く済ませたりする効果が高いと言われています。

どんなときに使う?(適応疾患・部位)

  • 痛風発作の治療および予防
  • 家族性地中海熱

痛風発作の場合は、主に足の親指の付け根など、特定の関節に起こる急性の炎症に対して用いられます。

コルヒチンの使い方(用法・用量

コルヒチンを飲む量やタイミングは、治療する目的(痛風発作の治療か、予防か、家族性地中海熱か)や、患者さんの状態によって大きく異なります。

コルヒチンは治療域と中毒域が近いため、医師や薬剤師の指示された用法用量を厳守することが、何よりも大切です。絶対に自己判断で量を増やしたりしないでください。

痛風発作の治療(発作が起きたとき、または予兆期)

【発作時】
通常、1回1錠(コルヒチンとして0.5mg)を服用します。症状が改善しない場合、3~4時間後に再度0.5mgを服用することもありますが、1日の最大量は1.8mg(通常3~4錠程度)を超えないようにし、翌日からは症状に応じて減量するか中止します。医師の指示を厳守してください。

【予兆期】
関節の違和感など、発作が来そうな感じがしたら、すぐに1錠(0.5mg)を服用します。これにより、本格的な発作を回避できることがあります。

痛風発作の治療では、飲むタイミングが命! 発作が起きてしまってから時間が経つと効果が薄れるため、「おかしいな?」と感じたらすぐに飲むのがコツです。

痛風発作の予防

通常、1日1回1錠(コルヒチンとして0.5mg)を服用します。尿酸値を下げる薬を使い始めるときなど、一時的に発作が起きやすくなる時期に併用されることが多いです。

予防で飲む場合は、毎日決まった時間に忘れずに飲むことが重要です。

家族性地中海熱

通常、1日1回1錠(コルヒチンとして0.5mg)を服用します。症状や年齢によって、1日1.5mgまで増量されることがあります。

主な副作用

  • 消化器症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢 これらが最も多く、服用を続けるかどうかの目安にもなります。
  • 脱毛(長期間服用した場合など)
  • 皮膚症状(発疹、かゆみなど)
  • 筋肉痛、筋力低下

特に注意が必要な「コルヒチン中毒」とは?

コルヒチンを過量に服用したり、腎臓や肝臓の機能が低下している方、特定のお薬と併用した場合などに、重篤な中毒症状が現れることがあります。コルヒチン中毒は命に関わることもある非常に危険な状態です。

コルヒチン中毒の初期症状(服用後数時間~24時間以内に出やすい)

  • 激しい吐き気、嘔吐、腹痛、下痢(しばしば血便を伴うことも)
  • のどの灼熱感、胸の痛み

これらの症状が現れたら、直ちにコルヒチンの服用を中止し、すぐに医療機関を受診してください。

中毒が進行すると…(24時間~数日後)

  • 呼吸困難、意識障害、けいれん
  • 腎不全、肝不全、心不全 
  • 血液障害(白血球減少、血小板減少などによる感染症や出血傾向) 
  • 脱毛、筋肉の障害

など、全身にわたる重篤な症状が現れ、最悪の場合、死に至ることもあります。

副作用が出たときの対処法

自己判断で服用を続けるのは危険です。コルヒチン中毒が疑われる初期症状(激しい消化器症状など)が現れた場合は、迷わず救急医療機関を受診してください。

その他の副作用(皮膚症状、筋肉痛など)が気になる場合も、医師に相談しましょう。

コルヒチンの注意事項・禁忌

使ってはいけない方

絶対に使ってはいけない方(禁忌)

  • コルヒチンの成分に対し過敏症(アレルギー)の既往歴のある方
  • 重い肝臓の病気または腎臓の病気のある方(特に予防目的での長期使用の場合): コルヒチンの排泄が遅れ、中毒のリスクが高まります。 
  • 妊娠中の方、または妊娠している可能性のある女性

使うときに特に注意が必要な方

  • 肝臓や腎臓の機能が低下している方(軽度~中等度も含む)
  • 衰弱している方
  • 胃腸に病気のある方
  • 血液の病気のある方
  • 高齢者の方授乳中の方お子さん(小児)

併用に注意が必要な薬

  • マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン、エリスロマイシンなど): コルヒチンの作用を強め、中毒のリスクを高めるため、原則として併用禁忌または非常に慎重な併用が必要です。 
  • アゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール、フルコナゾールなど): 同様にコルヒチンの作用を強めます。 
  • シクロスポリン(免疫抑制剤): コルヒチンの作用を強めたり、腎障害のリスクを高めたりします。 
  • HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビルなど): コルヒチンの作用を強めます。 
  • スタチン系薬剤(高コレステロール血症治療薬): まれに筋肉の副作用(横紋筋融解症など)のリスクを高めることがあります。

上記以外にも多数のお薬と相互作用を起こす可能性があります。他に飲んでいるお薬やサプリメントがある場合は、必ず医師や薬剤師に伝えましょう。

使用上の注意

グレープフルーツ(ジュースも含む)は、コルヒチンの代謝を妨げ、血中濃度を上昇させて副作用のリスクを高めるため、摂取は避けてください。

コルヒチン中毒などの副作用の初期症状(特に消化器症状)に注意し、異常を感じたらすぐに医療機関へ相談を!

痛風の方は、尿酸値をコントロールするための生活習慣(食事療法、適度な運動、水分補給など)も大切です。

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