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脂質異常症治療薬:スタチン系薬の効果と副作用

脂質異常症には大きく分けて、

  • ・悪玉コレステロールが高い場合(高LDL血症)
  • ・中性脂肪が高い場合(高TG血症)

と2つのタイプがありますが、悪玉コレステロールが高い場合に、特にスタチンの効果が高く、最初に使われるお薬となっています。今回はスタチンについてお話ししていきたいと思います。

目次

1. スタチンとは

2. 作用機序

3. 種類 (配合剤も)

4. 副作用

1. スタチンとは

体内のコレステロール値が高い状態が続くと、血管の壁にはプラークと呼ばれる脂の塊ができ、動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化により血管の弾力性が失われると、脳卒中や心筋梗塞などを起こしやすくなってしまいます。

スタチン系薬は、血中のコレステロール値を下げる薬です。 この系統に属するお薬の一般名は、ロスバスタチンやアトルバスタチンなど、語尾に「スタチン」と付くことからスタチン系薬とよばれています。

3-1. スタンダードスタチンとストロングスタチン

スタチンは現在6種類が販売されており、悪玉コレステロールを下げる強さが比較的マイルドな「スタンダードスタチン」と、より強力な「ストロングスタチン」があります。

一般名主な商品名規格
スタンダード
スタチン
プラバスタチンメバロチン5mg, 10mg
シンバスタチンリポバス5mg, 10mg, 20mg
フルバスタチンローコール10mg, 20mg, 30mg
ストロング
スタチン
ロスバスタチンクレストール2.5mg, 5mg
ピタバスタチンリバロ1mg, 2mg, 4mg
アトルバスタチンリピトール5mg, 10mg

臨床試験成績の結果を参考にすると、悪玉コレステロールの低下率は、

  • ・スタンダードスタチン…約15-20%
  • ・ストロングスタチン…約30-40%

ストロングスタチンはスタンダードスタチンの約2倍であることがわかります。

スタンダードスタチンとストロングスタチンのどちらがよい、というわけではなく、治療目標にあわせて使い分けをしますが、実際には効果の高さからストロングスタチンを用いるケースが多いです。

3-2. 実際の処方量はストロングスタチンの方が多い

厚生労働省の公開しているNDBオープンデータ(平成28年度)をもとに、スタチン製剤の外来院外処方数量を成分別にランキングしたものが以下になります。

順位一般名処方量
第1位ロスバスタチン約10億4000万
第2位アトルバスタチン約8億6400万
第3位ピタバスタチン約4億7300万
第4位プラバスタチン約4億7100万
第5位シンバスタチン約8100万
第6位フルバスタチン約6000万

第1位はロスバスタチン、第2位はアトルバスタチン、第3位はピタバスタチンと、 ストロングスタチンが上位を独占 しています。

3-3. ストロングスタチン内では効果・副作用に大きな違いはない

1日量をクレストール 2.5mg、リピトール 10mg、リバロ 2mgに設定して比較した研究 (PATROL試験 Circ J. 2011;75(6):1493-505)では、LDL-C値やトリグリセリド値を下げる効果は同じで、副作用の発生頻度も同じだったことが示されています。

ただし、3剤の中でクレストールは最も用量の幅が広く、最大通常量の8倍である20mgまで増量することができ、より厳格にコレステロールを下げることが可能です。

3-4. 投与量を8倍にしたら効果も8倍?

クレストールが通常量に対する最大用量が最も多いストロングスタチンであることはさきほどお話しした通りですが、投与量を8倍にしたら悪玉コレステロールを下げる作用も8倍になるのでしょうか。

残念ながらそうはならず、下表の通り、用量を倍に増やしても6%しか効果が発揮できないことがわかっています。これは俗に「6%ルール」と呼ばれています。

これは、肝臓内でのコレステロール合成を抑えると、今度は代償性に小腸からのコレステロール吸収を増やして血中のコレステロール量を均一に維持しようとする機構が働くため、と考えられています。

3-5. 配合剤について

本来組み合わせて処方されるお薬の成分を1つのお薬の中に配合したお薬のことを配合剤といいます。スタチンには主に2種類の配合剤があります。

3-5-1. スタチンとゼチーアの配合剤

悪玉コレステロールがスタチンの増量だけでは十分にコントロールするのが難しいことはさきほどお話ししましたが、一つの解決法として、小腸のコレステロール吸収を阻害するエゼチミブ(ゼチーア®︎)の併用が注目されています。

スタチンで合成を抑制すればするほど、代償性に亢進する腸管からのコレステロールを抑制することでより強力なコレステロール低下作用が得られます。

 MSD社ホームページより

クレストールを投与しても悪玉コレステロールが十分に低下しなかった患者さんにゼチーアの10mgを追加したところ25%近く悪玉コレステロールが低下しています。

最近では、

  • ・リピトールとゼチーアが1粒になったアトーゼット配合錠
  • ・クレストールとゼチーアが1粒になったロスーゼット配合錠

が発売されており、ストロングスタチンだけでは悪玉コレステロールが下がりきらない方へ使用されています。

3-5-2. スタチンとカルシウム拮抗薬の配合剤

カルシウム拮抗薬は、血圧を下げるときに使うよく使用される降圧剤です。 脂質異常症(高脂血症)と高血圧は、合併することもしばしばあることから、同時に治療できる配合剤が発売されています。

代表的なカルシウム拮抗薬であるアムロジピンとリピトールの配合剤がカデュエット配合錠(カルシウム拮抗薬のデュエットという由来)として発売されており、すでにアマルエット配合錠というジェネリック医薬品も発売になっています。

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