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ヒルドイドソフト軟膏とヘパリン類似物質油性クリームの基剤

先発品も後発品も油中水型クリーム(油成分の中に水成分が細かい粒子として浮遊しているタイプ)に分類されるのです。

ヘパリン類似物質関連は一般名処方で調剤ミスが多く報告されていますので、基剤の種類、調剤時の注意点について解説していきます。

基剤の種類

外用剤である、軟膏、クリーム、ローションは基剤によってさらに分けることができます。

  1. 油脂性軟膏(ワセリンベース)
  2. 水溶性軟膏(マクロゴール)
  3. クリーム(油中水型 W/O型)
  4. クリーム(水中油型 O/W型)
  5. ローション(乳剤性)
  6. ローション(溶液性)
  7. フォーム(液剤)

1から7の順で、

  • 被膜性
    →弱くなる
  • 展延性
    →よくなる
  • べたつき
    →少なくなる
  • 皮膚刺激
    →強くなる

となります。

クリームには油中水型(W/O型)と水中油型(O/W型)があり、
油中水型ヒルドイドソフト軟膏ヘパリン類似物質油性クリーム)、水中油型ヒルドイドクリームとなります。

油中水型(W/O型)は油性成分が水性成分を取り囲んだ状態になっており、ヒルドイドソフト軟膏は水中油型クリームであるヒルドイドクリームに比べて被膜性が高くしっとりするのが特徴です。

ヒルドイドソフト軟膏の一般名

ヒルドイドソフト軟膏もヒルドイドクリームも、どちらもクリーム(乳状型軟膏)で、一般名は下記のように区別されています。

【一般名】ヘパリン類似物質軟膏
→先発 ヒルドイドソフト軟膏
→後発 ヘパリン類似物質油性クリーム
【一般名】ヘパリン類似物質クリーム
→先発 ヒルドイドクリーム
→後発 ヘパリン類似物質クリーム

薬局でも調剤ミスが多いので、一般名の場合は特に注意しなければいけません。

基剤別ヒルドイドの分類

基剤商品名
クリーム
油中水型 
W/O型
ヒルドイドソフト軟膏
ヘパリン類似物質油性クリーム「各種」
クリーム
水中油型 
O/W型
ヒルドイドクリーム
ヘパリン類似物質クリーム「各種」
ローション
乳剤性
ヒルドイドローション
ローション
溶液性
ヘパリン類似物質ローション「各種」

ヒルドイドとヘパリン類似物質

世の中には数多くの保湿剤があり、市販品から処方薬まで多種多様です。処方薬の保湿剤の中では、ヒルドイド(製造販売:マルホ株式会社)が代表的なものの1つです。

保湿剤には、皮膚に水分を与える作用や皮膚の水分が逃げないようにする作用があり、皮膚を乾燥やその他のトラブルから守ってくれる効果があります。

ヒルドイドに含まれる有効成分は「ヘパリン類似物質」といい、肝臓で作られる「ヘパリン」という物質に似た構造を持っています。ヘパリン類似物質には、保湿効果のほか、血行を促す作用や線維芽細胞の過剰な増殖をおさえる作用もあるため、凍瘡(しもやけ)やケロイドの治療などにも使用されることがあります。

ヒルドイドの効果

保湿効果

ヘパリン類似物質は水分子を引き寄せて保持する能力があり、さらに皮膚に浸透することで保湿力を発揮します。また、持続的な保湿効果があるため、ヒルドイドをはじめとした多くの保湿剤に使用されています。

血行促進効果

ヘパリン類似物質には、血液をかたまりにくくして血流を良くする作用があります。そのため、血行障害が原因で生じる痛みや炎症、しもやけ、外傷後の血種(皮下出血)などにも効果が期待できます。

抗炎症効果

ヘパリン類似物質は、蛋白分解酵素やヒアルロニダーゼ*の活性をおさえると同時に、部分的に血行やリンパの流れを良くすることで、おだやかな抗炎症作用を示すとされています。
このようなことから、ヘパリン類似物質は、外傷後のはれや腱鞘炎、筋肉痛、関節炎などにも使用されます。
*ヒアルロニダーゼ:炎症時に活性化される成分で、組織の構造を破壊したり、炎症系細胞の透過性を亢進させたりする作用があります。

線維芽細胞増殖抑制効果

ヘパリン類似物質には、コラーゲンの過剰な生成をおさえる作用もあります。そのため、ケロイドや肥厚性瘢痕の治療・予防にも適応があります。

ニキビへの効果

ヘパリン類似物質には、ニキビに対する直接的な効果はありません。毛穴づまりを改善する効果も期待できません。
ただ、ヘパリン類似物質の保湿効果の影響で肌の状態が良くなり、結果としてニキビが改善される可能性はあります。
なお、ヒルドイドなどヘパリン類似物質がニキビ治療薬と一緒に処方されることもありますが、これは、ニキビ治療薬の副作用としてあらわれる刺激感や肌の乾燥をやわらげるためです。

・ヒルドイドを長期使用しても大丈夫ですか?注意すべきことはありますか?

ヒルドイドは、症状に応じて長期間使用されることもあります。また、長期連用で副作用発生率が高くなるなどの報告もありません。
もっとも、皮膚の状態は日々変化します。ヒルドイドの使用でいつもと違う刺激やかゆみなどを感じた場合は、早めに受診してください。

・ヒルドイドで傷跡は消えますか?

手術痕やケガなどが原因でできたミミズバレ状の傷跡、ヤケド跡の改善にも効果が期待できます。
ただし、できてから何年も経っている傷跡では、効果があらわれるまでに時間がかかったり、十分に効果があらわれなかったりする可能性が高いです。

・ヒルドイドは、シミに効果がありますか?

ヒルドイドには、シミ(色素沈着)を薄くする効果はありません。ヒルドイドの使用で肌のターンオーバーサイクルが整い、結果としてシミが多少改善することはあるかもしれませんが、直接的な効果はありません。
シミに対しては、より効果が期待できるほかの薬剤がありますので、お気軽にご相談ください。

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