神社解説

喘息治療の吸入薬の選び方

pMDI:(加圧噴霧式定量吸入器)

ガスの圧力で薬剤を噴射します。
吸入するときは、薬の噴射と薬を吸い込むタイミングを合わせる必要があります。

DPI:(ドライパウダー定量吸入器)

粉末の薬剤を、自分で吸い込むタイプの吸入器

SMI:(ソフトミスト定量吸入器)

ゆっくりと噴霧される吸入液を吸い込むタイプの吸入器です。吸入器の名称名称をクリックすると、吸入方法の動画を閲覧できます

① ステップ 1:症状が週1回未満、夜間症状が月に2回未満

② ステップ 2:症状が週1回以上だが毎日ではない、日常生活が一部制限される

③ ステップ 3:症状が毎日ある、日常生活が大きく制限される

④ ステップ4:治療下でも増悪症状が毎日ある、夜間症状で睡眠が妨げられる

 そして、この分類に従って、吸入薬の選択を下記の通り、推奨しております。

①:吸入ステロイド(ICS)

②~④:吸入ステロイド(ICS)に長時間作用性β2刺激薬(LABA)を併用

 →それでもコントロールが困難な場合、上記に長時間作用性抗コリン薬(LAMA)も併用

 そこで、上記吸入薬のうち特に使用されることが多いものについてピックアップして、さらに具体的に説明していきたいと思います。

吸入ステロイド(ICS)

 軽度の喘息症状(ステップ 1)では、まずは気道の炎症を抑える吸入ステロイド(通称 ICS)による治療から始まります。

 ICSとして用いられる吸入薬としては、下記の2つが多く用いられる印象があります。

フルタイド(フルチカゾン)

 吸入器の種類が多く、患者さんに合ったものを選びやすいという特徴があります。 

 また、粒子の大きさが大きめの為、肺のより口側の炎症に効きやすいと言われております。

 下で説明するアドエアの成分を含んでいる為、アドエアへのステップアップ・ステップダウンとして使いやすいという特徴もあります。

パルミコート(プテソニド)

 「タービュヘイラー」と呼ばれるパウダー(粉)タイプの吸入ステロイドです(使い方はシムビコートの項で図示しています)

 咽頭部への副作用が少なく、安全性の報告が最も多くされておりますので、お子さんでも使いやすく、妊婦さんにも優先的に処方されることが多いです。

 下で説明するブテホルの成分を含んでいる為、ブテホルへのステップアップ・ステップダウンとして使いやすいという特徴もあります。

吸入ステロイド(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)

 ステップ 2以降の喘息症状では、ICSに気管支拡張作用のある長時間作用性β2刺激薬(通称 LABA)を併用した治療を考慮します。

 ICSとLABAを別々に吸入するよりも、現在は両者を配合した吸入薬が存在する為、下記のような配合薬が多く用いられます。

ブデホル(シムビコート)

 ブデホル(シムビコート)は、即効性のある成分も含まれる為、発作時に追加吸入することもでき(SMART療法と呼びます)、呼吸器内科など非常に多くの場で処方されている効果の確立した吸入薬です。わたくし院長も自身の治療に用いており、当院でも採用することが多い吸入薬です。

 また無味無臭で違和感が少なく、咽頭部への副作用が少ないこともメリットです。実際、ブデホルを使用いただいた当院の患者様でも咽頭部症状を認めた方は数少ないです。

 デメリットとしては、デバイスとして用いられる「タービュヘイラー」の操作性がやや難しい為、処方時には必ず使い方を指導しております。また、他の吸入薬と比較すると薬価が高いという点も挙げられます。

※ 尚、ブデホルとシムビコートの違いは、ジェネリック(ブデホル)か先発品(シムビコート)かの違いですので、どちらを選択するかは当院ではなく”薬局の判断”となります(当院の処方箋は全て”一般名”=成分での記載となりますので、ブデホルとシムビコートの場合は”ブデソニド・ホルモテロールフマル酸”と処方箋に記載されます)。ジェネリックか先発品かで効果自体についてはわたくし院長としては差異は感じておりませんので、そこにこだわりはありません。したがいまして、万が一いずれかをご希望される患者様は薬局にお申し付けいただけますと幸いです。

レルベア

 レルベアは、1日1回の吸入で済み、操作性が簡単で最も安価というメリットもあり、ブデホル(シムビコート)同様当院で採用することの多い吸入薬です。

 「エリプタ」と呼ばれる特殊なデバイスで、吸入器の中にドライパウダー(粉末)がセットされており、吸い込み口から思い切り吸い込んで吸入します。シンプルなデバイスである為、処方されるケースを多く見かけます。

 一方、粉っぽいと感じられる方が多く、粒子の大きさもやや大きめの為、咽頭部への副作用がやや高めな点がデメリットとなります。

アドエア

 アドエアは、“かたつむり”型の「ディスカス」と呼ばれるデバイスが一般に用いられます。しっかり息を吸える方に向いています。

 一方、息を吸う力が弱い方でも扱いやすい「エアゾール」と呼ばれる噴霧型のデバイスもあり、幼児や高齢者でも扱いやすいというメリットが特徴です。

 エアゾールタイプは、「シュッ」と噴霧された時に、しっかり吸い込まなければならない為、慣れない初めのうちは上手に吸入できない可能性が高いです。

 またのどに直接噴霧される為、咽頭部への副作用はシムビコートよりもやや高めな点がデメリットとなりますが、いずれが良いかという明確な結論は未だ出ておりません。

フルティフォーム

 アドエアと同様、息を吸う力が弱い方でも扱いやすい「エアゾール」のデバイスがあり、幼児や高齢者でも扱いやすいというメリットが特徴です(使い方はアドエアの項で図示しています)

 粒子が小さく、肺の隅々まで行き渡りやすいという特徴があります。

吸入ステロイド(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)+長時間作用性抗コリン薬(LAMA)

 上記 ICS+LABAの合剤吸入薬含めた既存の喘息治療でもコントロールが困難な場合の次のステップとして、LABAとは別の機序で気管支を拡張させる長時間作用性抗コリン薬(通称LAMA)を併用することが可能です。

 現在は3剤の合剤(トリプル製剤)が存在し、気管支喘息に用いられるものは下記の2つになります。

 尚、トリプル製剤は、前立腺肥大症や緑内障がある場合には使用できないケースがありますので、喘息治療時には必ず伝えるようにしましょう。

テリルジー

 比較的古くから使われているトリプル製剤です。

 レルベアと同じ「エリプタ」と呼ばれるデバイスで、しっかり強く吸い込む必要がある為、使い初めは吸った瞬間にむせてしまうことがありますが、次第に慣れていきます(使い方はレルベアの項で図示しています)

 操作性がエナジアに比較してやや簡易というメリットがあります。

エナジア

 比較的新しいトリプル製剤となります。

 「ブリーズヘラー」と呼ばれるカプセルを埋め込む特殊なタイプのデバイスで、ゆっくり吸い込むだけで効果を得られる為、息を吸う力が弱い方でも扱いやすいというメリットがありますが、逆に強く吸ってしまうとむせてしまうことがあります。

 操作性がテリルジーに比べやや劣る為、最初は煩雑に感じることがあります。

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