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特定薬剤管理指導加算1「イ」「ロ」の算定要件は?質問にわかりやすく回答

Q1:パロキセチン(先発品名:パキシル)のように、添付文書通りに徐々に用量を増やしていく場合でも算定区分「ロ」は算定可能?

算定可能と考えます。
例えばパロキセチンは、用量の増加に伴って、副作用の発現リスク等も変わっていくことが想定されます。ということは、服薬指導も、その都度患者さんの状態を勘案して行うことになりますので、薬剤師の専門性を発揮する機会といえます。

もちろん、画一的な指導では要件を満たせないと考えますが、添付文書に沿って用法や用量が変更になった場合でも、適切な指導を行うことで、算定可能と考えます。

Q2:バイアスピリン錠(単剤)からキャブピリン錠(合剤)への変更の場合、算定区分は「イ」「ロ」のどちら?

そもそも算定が出来ないと考えます。
特定薬剤管理指導加算1は、特に安全管理が必要な医薬品が対象となります。

特に安全管理が必要な理由は様々ですが、例えばバイアスピリン錠であれば、アスピリン100mgという成分に対しての安全管理が求められていると考えることができます。
キャブピリン錠は、アスピリン100mgとボノプラザン10mgの合剤です。

アスピリン錠(単剤)からキャブピリン錠(合剤)に変更になったとしても、成分としてはアスピリン100mgを服用することには変わりがなく、 アスピリン100mgに対する適切な指導内容は同様と考えます。
また、2024年度診療報酬改定の疑義解釈(その1)(※)においても、「同一成分の異なる銘柄の医薬品に変更された場合は算定不可」とされており、単剤から合剤へ変更(ハイリスク薬としては同一成分)も算定不可と考えることが出来ます。

もちろん、用法または用量の変更、副作用の発現状況等の変化があれば算定出来るケースもありえますが、同一成分である以上、相応の理由がなければ算定が出来ないものと考えます。

(※)厚生労働省保険局医療課 事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その1)」

Q3:新たにハイリスク薬(A錠)が処方され、かつ、服用中のハイリスク薬(B錠)の用量が変わった場合、算定区分は「イ」「ロ」のどちら?

2024年度診療報酬改定の疑義解釈(その1)(※)において、特定薬剤管理指導加算1は、1回の処方あたり「イ」又は「ロ」のどちらかのみ算定、とされています。
算定区分「イ」「ロ」どちらも満たした場合は、点数の高い「イ(10点)」を算定することになるかと思います。

この点については、改定前も、1回の処方あたり、特定薬剤管理指導加算は1回しか算定出来ませんでしたので、これまで通りの考え方で算定を行って頂ければと存じます。
なお、本点数は「特に安全管理が必要な医薬品であることを伝えた上で、これまでの指導内容等も踏まえて、適切な指導を行った場合に算定出来る点数」となります。
ハイリスク薬が、新たに処方、用量等の変更があっただけで算定出来るものではないことは、改めて押さえておきましょう。

Q4: 結局、ハイリスク薬が従来と同一処方の場合は算定出来ない?

従来と同一処方であっても、算定区分「ロ(5点)」を算定出来るケースもあります。
2024年度診療報酬改定では、算定出来るケースが明確化され、新たに処方されたケースや用法、または用量の変更があったケースなどに限定されることとなりました。

しかしながら、従来と同一の処方内容であっても「特に指導が必要と判断した理由」があれば算定可能です。
例えば・・・

「特に指導が必要と判断した理由」事例
①ハイリスク薬である抗うつ剤を服用中の患者が、慢性的な便秘に悩んでいる等、副作用と思われる症状が出ているが継続服用が必要なケース
②ハイリスク薬である血液凝固製剤について、出血を伴う手術を控えているため一時服薬を中止するケース
③ハイリスク薬である不整脈用剤について、服用コンプライアンスが低下していることが判明したケース

こういったことは薬局現場ではよくあるかと思います。
これらはあくまで一例ですが、同一処方内容であっても「患者の副作用の発現状況、服薬状況等の変化に基づき保険薬剤師が必要と認めて指導を行った患者」であれば算定区分「ロ(5点)」として算定可能です。
なお、同一処方内容で算定する場合は、「特に指導が必要と判断した理由」を薬剤服用歴等へ記載することが必要です。併せて押さえておきましょう。

特定薬剤管理指導加算1「イ」「ロ」の算定要件Q&Aまとめ

今回は、特定薬剤管理指導加算1でよくある質問を、できるだけわかりやすく解説しました。
算定頻度が非常に高い点数ですので、改定内容をしっかりと把握しておくことが必要かと思います。
薬局内で「改定前後で何がどう変わったのか」を共有しながら、実際の薬局業務に落とし込んで算定可否を検討し、適切な算定を行っていきましょう。

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