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皮膚科でコルヒチンが処方された理由

コルヒチンは、古くから痛風治療薬として、痛風発作の緩解や予防に使われている薬である。ロイコトリエン、インターロイキンなどに対する好中球の遊走性・反応性を低下させることにより、痛風の発作を抑制する。尿酸代謝にはほとんど影響しない。

 好中球は本来、体内に侵入する病原微生物を、活性酸素や加水分解酵素によって貪食・殺菌する。しかし、感染がないのに生体組織に好中球が浸潤・集積し、組織障害を来す疾患が幾つかある。ベーチェット病やスイート病、壊疽性膿皮症、持久性隆起性紅斑といった、好中球性の炎症性皮膚疾患もその1つである。これらの皮膚疾患は、従来の治療に抵抗性を示す難治例が多い。そのような場合に、好中球機能の抑制作用を期待して、コルヒチンが使用されることがある。

 代表的な疾患であるベーチェット病は、好中球の異常活性化を特徴とし、多彩な症状を呈する。口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、眼のぶどう膜炎、外陰部潰瘍を主症状とし、急性炎症性発作を繰り返す。皮膚症状としては、下腿に好発する結節性紅斑、皮下の血栓性静脈炎、顔面、頸部、背部などに見られる毛嚢炎様皮疹やざ瘡様皮疹などが挙げられる。

 皮膚症状を主体とするベーチェット病の治療では、一般に非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の内服やステロイドの外用が行われるが、コルヒチンの内服が効果を示すことがある。特に、結節性紅斑については、コルヒチンの有用性が証明されている。

 また、スイート病にも、コルヒチンが使われる。スイート病は、発熱、末梢血好中球増加、好中球浸潤性紅斑を3主徴とする急性の症候群である。皮疹は顔面、頸部、四肢に好発し、数cm大までの有痛性の紅斑や結節が多発する。病態としてベーチェット病と共通項が多く、病因は不明だが、好中球の異常活性化が関与していることは間違いないと考えられている。その他、壊疽性膿皮症や持久性隆起性紅斑、後天性表皮水疱症などの好中球性・自己免疫性の皮膚疾患にもコルヒチンが使われることがある。

 Bさんがこれらの疾患であると確定診断されたかは不明であるが、口の周りの潰瘍がステロイドの外用薬を長期間使用してもなかなか治らないため、主治医は今回コルヒチンを処方したと考えられる。同薬の効果は、少なくとも1~2カ月以上服用しないと表れない。また、効果は劇的なものではなく、症状の軽症化、出現頻度の減少という形で表れるので、服薬指導時にはこれらの点をあらかじめ説明しておきたい。

 また、副作用としては横紋筋融解症、ミオパチー、末梢神経障害などが生じることもある。下痢が生じる頻度も比較的高いが、しばらくすると消失することが多いので、可能ならそのまま継続して様子を見るよう説明する。

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