消化管からの吸収率では、ヘム鉄は非ヘム鉄の5~6倍(日本人のデータでは、ヘム鉄25%VS非ヘム鉄5%)と言われています。
また消化管への影響では、非ヘム鉄は細胞内に取り込まれる際に、3価から2価への鉄となるのですが、この2価のむき出しの鉄が「むかつき」の原因となります。
一方ヘム鉄は、ポルフィリンと複合体をつくるため、そのような胃腸障害を起こしません。過剰摂取も起こりにくいと言われています。
さて、医療機関における保険診療で処方可能な経口鉄剤は以下のごとくです。
(※治療に使用する1日の常用量100mgで値段を比較)
①フェロミア50mg/錠(20.4円/100mg)
②フェロ・グラデュメット105mg/錠(17.5円/100mg)
③インクレミンシロップ5%(101.7円/100mg)
残念なことに、このいずれもが「非ヘム鉄」なのです。
つまり吸収が悪く、胃腸障害をきたしやすいものしか、医療機関では処方できないのです。
インクレミンシロップは他の錠剤に比較して、むかつきは少ない印象がありますが、ご覧のように薬の値段が少々高めです。
(とはいっても、3割負担の方では処方料などを含めても1か月分で1500~2000円ですが・・・)
そして「ヘム鉄」となると、市販されているサプリメントに頼らざるを得ないわけですが、インターネットで検索してみると以下の「ヘム鉄」が上がってきました。
(※治療に要する非ヘム鉄100mg/日に相当するヘム鉄を20mg/日として値段を比較)
①DHC「ヘム鉄」(5mg/錠、約5.8円/錠⇒約23円/20mg)
②アサヒ「ディアナチュラ ヘム鉄」(3mg/錠、約23円/錠⇒約160円/20mg)
③フジテックス「ワカサプリ ヘム鉄」(3mg/錠、約36円/錠⇒約250円/20mg)
結構、各社で違うものですね。
結局のところ、健康保険を使えば比較的安く済みますが、「非ヘム鉄」なので飲めない方もいます。
市販のサプリを買えば簡単に「ヘム鉄」が手に入りますが、治療に使う高用量を摂ろうとするとお値段は高くなります。
DHCはかなり安いようですが、理由は不明です。。。ワカササプリは、造血に必要なビタミンB6、銅、モリブデン、パントテン酸などが微量ながら含まれているので少々お高くなっているようです。
気を付けなければいけないことは、鉄剤の過剰な摂取です。
肝臓に鉄が蓄積すると、「ヘモジデローシス」と呼ばれる肝臓障害を引き起こします。
ですから、貧血の治療をする際は、医療機関で採血をして、血中に存在する「血清鉄」と細胞内の貯蔵鉄である「フェリチン」の双方ともに過不足ないこと確認しながら、鉄剤の内服量および期間を調整するのが安全です。