特に注意しておきたい薬
妊婦さんに禁忌とされている薬には、以下のようなものが挙げられます。
- ワルファリン(抗凝血薬)
- エトレチナート(角化症治療薬)
- リバビリン(抗ウイルス薬)
- トリアゾラム(向精神薬)
- エルゴタミン(片頭痛治療薬)
- ホルモン剤
- 抗生物質(アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系)
妊娠初期は薬の服用に特に注意が必要な時期
妊娠週数に応じて、薬が赤ちゃんに影響を与えうる危険性の大きさも変わってきます。中でも、妊娠初期(妊娠13週6日まで)は特に注意が必要な時期です。
無影響期/4週未満
この時期はまだ赤ちゃんの器官は形成される前ということもあり、薬が奇形などを引き起こすリスクは低いと言えます。「まだ妊娠に気づいておらず薬を服用していた!」というケースもあるかもしれませんが、妊娠が継続できていれば特別気にする必要はありません。
ただし、残留性の高い薬については注意が必要です。薬の成分が体内に残ったまま、妊娠4週以降に入ることも考えられます。薬の影響が長く残るものとして挙げられるのは、「エトレチナート(角化症治療薬)」、「リバビリン(抗ウイルス薬)」、「レフルノミド(抗リウマチ薬)」など。妊娠の可能性がある場合は、こういった薬の服用は避けるようにしましょう。
絶対過敏期/4週~7週
薬の服用において最も注意が必要なのが、妊娠4週~7週の時期です。この頃は赤ちゃんの中枢神経や心臓などの重要な器官が作られるため、薬の影響も受けやすいとされます。
前述した催奇形性の高い薬は、妊娠中の服用は避けましょう。妊娠している可能性があることを申告していれば、医療機関で処方されることはありません。
また、市販の薬が奇形の原因となることは稀ですが、いずれにせよ妊娠中に服用してもよいものか、添付文書にしっかりと目を通すようにしてください。
相対過敏期/8週~15週
妊娠8週から15週の期間は、口蓋や手足、性器などが形成されています。重要な臓器などの形成は終わっていますが、まだまだ注意が必要な時期です。引き続き、上記の薬は使わないようにしましょう。
潜在過敏期/16週以降
赤ちゃんの体のほとんどが形成されているため、薬が奇形を招く危険性はほぼなくなります。ただし、妊婦さんが飲んだ薬は胎盤を通して赤ちゃんの体内にも入るため、一部の薬は胎児の機能障害を引き起こすことも知られています。特に非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は赤ちゃんの動脈管を収縮させてしまう働きがあるため、服用を避けることが一般的です。
アジスロマイシンの妊婦・授乳婦の投与について
妊娠・授乳期に、歯茎の炎症や風邪や扁桃腺炎では、少し前までは、昔からあるセフェム系の処方が多かったように思えますが、最近はマクロライド系も処方されることがあると思います。
アジスロマイシンを含むマクロライド系は、セフェム系、ペニシリン系と同様に、妊娠中に比較的安全とされている薬になっています(1)。
アジスロマイシンは、妊娠期における催奇形性の研究が行われており、先天奇形発生率の有意な上昇は認められていない、となっています。 また、母乳移行性も低く安全に使用できると書かれています(3)。
以上より、日常の薬局の調剤業務では、アジスロマイシンは妊婦にも授乳婦にも比較的安全に服用できる薬であると答えても差し支えないと考えます。