2024年の調剤報酬改定では、以下のように見直しがされました。

例えば、
「重複投薬を発見して疑義照会を行い、該当の薬が削除された」
「患者さんから残薬があるとの申し出を受けて疑義照会を行い、該当の薬の処方日数が減少した」
といったケースは皆さんの薬局でも算定されているかと思います。
一方で悩ましいケースも多くあります。
今回は、算定に悩みがちな以下の事例について、考え方のポイントをお示ししたいと思います。
質問事例1:薬剤の追加、投与期間の延長でも算定できる?
結論としては、算定可能です。
この点については、疑義解釈(H28)が出ており、『「薬剤の追加、投与期間の延長」等であっても、要件に該当するものについては算定可能である。』とされています。
(問31)
これまでの「重複投薬・相互作用防止加算」では、同一医療機関の同一診療科の処方せんについて処方変更があったとしても算定できないとされていたが、平成28年度診療報酬改定で見直した「重複投薬・相互作用等防止加算」及び「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」については、同一医療機関の同一診療科から発行された処方せんであっても、重複投薬、相互作用の防止等の目的で、処方医に対して照会を行い、処方に変更が行われた場合は算定可能と理解してよいか。
(答)
「重複投薬・相互作用等防止加算」及び「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」は、薬学的観点から必要と認められる事項により処方が変更された場合には算定可能としているので、上記の内容も含め、これまで算定できないとされていた「薬剤の追加、投与期間の延長」等であっても、要件に該当するものについては算定可能である。
出典)厚生労働省保険局「医療課疑義解釈資料の送付について(その1) 事務連絡平成28年3月31日」
※下線・太字は筆者改変
それでは、「薬剤の追加、投与期間の延長」の場合は、「イ残薬調整以外(40点)」、「ロ残薬調整(20点)」のどちらを算定出来るのでしょうか?
ここからは「イ残薬調整以外(40点)」、「ロ残薬調整(20点)」の2つに分けて考えてみます。
【イ残薬調整以外(40点)】
残薬調整以外(40点)は以下の場合で処方変更が行われた場合に算定可能です。
算定できるケース
(イ) 併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む。)
(ロ) 併用薬、飲食物等との相互作用
(ハ) そのほか薬学的観点から必要と認める事項
このうち、「(ハ) そのほか薬学的観点から必要と認める事項」は、別の疑義解釈で以下のように示されており、「薬学的観点での薬剤の追加、投与期間の延長」の場合は、算定可能とされています。
(問30)
重複投薬・相互作用等防止加算及び在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定対象の範囲について、「そのほか薬学的観点から必要と認める事項」とあるが、具体的にはどのような内容が含まれるのか。
(答)
薬剤師が薬学的観点から必要と認め、処方医に疑義照会した上で処方が変更された場合は算定可能である。具体的には、アレルギー歴や副作用歴などの情報に基づき処方変更となった場合、薬学的観点から薬剤の追加や投与期間の延長が行われた場合は対象となるが、保険薬局に備蓄がないため処方医に疑義照会して他の医薬品に変更した場合などは当てはまらない。
出典)厚生労働省保険局「医療課疑義解釈資料の送付について(その1) 事務連絡平成28年3月31日」
※下線・太字は筆者改変
よって、薬学的観点に基づく薬剤の追加や投与期間の延長が行われた場合は、「イ残薬調整以外(40点)」が算定可能であることが分かります。
【ロ残薬調整(20点)】
残薬調整(20点)はその名の通り、残薬について処方医に疑義照会を行い、処方変更が行われた場合に算定可能です。
よくあるケースとして、患者さんの以下のようなご要望があると思います。
よくある患者さんのご要望
「次の受診が40日後になるので、いつも飲んでいるA薬の投与期間(30日処方)を40日処方へ増やして欲しい」
この場合、薬剤師が疑義照会をして投与日数が増えた場合は「ロ残薬調整(20点)」は算定可能でしょうか?
ここは算定可否が明確に示されておりませんし、判断が分かれるところです。
投与期間短縮だけでなく、投与期間延長も「残薬調整である」と考えるなら、算定することになるかも、と思います。
対象となる薬剤や処方背景にもよると思われますが、算定可能な余地はあるのではないかと考えております。
「薬剤の追加、投与期間の延長は算定可能か?」まとめ
ケース | 算定区分 |
薬学的観点から薬剤の追加や投与期間の延長が行われた場合 | イ残薬調整以外(40点)の「(ハ) そのほか薬学的観点から必要と認める事項」に該当 |
その他の理由で薬剤の追加や投与期間の延長が行われた場合 | ロ残薬調整(20点)に該当する可能性(?) |
質問事例2:「そのほか薬学的観点から必要と認める事項」とは?
この点については疑義解釈(H28)で以下の様に示されています(筆者要約)

逆に考えると、これ以上の事は示されておらず、各薬局の判断に委ねられているとも言えます。
だからこそ、多くの薬局が悩み「〇〇のケースは該当するのか?」といったご質問を多く頂きます。
その際の私の返答としては、「事務さんではなく、薬剤師が処方医に問い合わせすべきかどうか」で判断してはいかがでしょうか?とお伝えしています。
薬剤師が問い合わせすべきと判断する背景には「何らかの薬学的観点が入っている」とお考えだからだと思います。
そのような事例であれば「そのほか薬学的観点から必要と認める事項」に該当するのではないか、ということをお伝えしています。
何を持って薬学的観点とするかという点については議論が分かれるところですが、一つの判断基準として「事務さんではなく、薬剤師が処方医に問い合わせすべきかどうか」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は重複投薬・相互作用等防止加算で特に多く受ける質問事例を解説しました。
本点数は、地域支援体制加算の実績要件にも盛り込まれるなど、薬局がその機能を発揮していることを示す、非常に重要な点数であるだけでなく、何よりも、患者さんの健康被害を防ぐことにつながる点数でもあります。
漏れなく算定できるよう、日頃から薬局内で、算定可能なケースについて認識を合わせてはどうでしょうか。