A:最近、しゃっくり(吃逆)が出るようになりました。病院の薬を飲み始めてからのように思いますが、しゃっくりの原因となるような薬があるのですか?
Q:頻度は高くないのですが、気管支拡張薬、血圧降下薬、ステロイド剤など、一部の薬ではしゃっくりを起こすことが知られています。
1 しゃっくりの病態生理と原因
しゃっくりは、呼吸筋(横隔膜など)の不随的座収縮による短く強力な吸気努力と声門閉鎖から引き起こされる反射現象です。咳やくしゃみが防的役割を持っているのに対して、しやっくりの役割や病態は不明であり、現在まで有用な役割は認められていません。しゃっくり反射の誘発部位としては鼻咽頭部、食道、胃、心臓、横隔膜などがあり、神経学的には迷走神経が主要な求心路の一つと考えられています。
1) 急性しゃっくり
急性のしゃっくりは健康な人でもよく起こります。大抵は自然に消失するか、「息をこらえる」とか「多目のご飯を飲み込む」など、簡単な方法で止まる事実はよく経験されます。ただ、心筋梗塞後にしゃっくり発作が出現することがあり、この場合には可能な限り早く治療すべきですが、その他では臨床的に問題となることは少ないといわれています。
2)慢性しゃっくり
しゃっくり発作が 48時間以上続いたり、繰り返され再発する場合に“慢性しゃっくり”と定義され、この場合には飲食や睡眠が障害され、体重減少、疲弊、不安、抑うつなどの症状が出現します。さらに発作が継続すれば胸腹部の手術後では創傷解離の心配があるなど、臨床的にも問題となるケースがあります。多くは原因不明ですが、時に種々の疾患が潜在していることもあり、その障害部位から中枢性、未梢性、医原性、その他に分類されることもあります。
2慢性しゃっくりの治療
慢性しゃっくりの原因は多様なので、過去の手術歴、呼吸器や消化器、尿路系の既往歴、アルコールや薬剤の使用などについて詳細な問診が重要になります。治療の基本は、原疾患があればその治療を行い、不明あるいは治療が無効な場合に薬物療法を試みます(表3)。しゃっくりの薬物療法としては従来からクロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)、メトクロプラミド(プリンペラン、プロメチン他)が繁用されることが多いのですが、最近、GABAアンタゴニストのバクロフェン(ギャバロン、リオレサール)も使用されています。また、古くから“柿のへだ”が効くとされ、その成分エキス剤が「ネオカキックス」として市販されています。
3しゃっくりの原因薬剤と治療薬剤
実際に添付文書に副作用として「しゃっくり」の記載がある薬剤、また逆に、効能・効果として「しゃっくり」がある薬剤を検索した結果、次の薬剤がヒットしました。
1) 添付文書上に副作用として「しゃっくり」がある薬剤
① 内服薬(商品名)
アミノフィリン錠・末(ネオフィリン他)
エトスクシミド散・シロップ(ザロンチン)
エトドラク錠(ハイペン他)
オンダンセトロン錠・シロップ(ゾフラン)
クラリスロマイシン錠・DS(クラリス、クラリシット他)
ゾニサミド散・錠(エクセグラン)
テオフィリン放錠・徐放散・徐放カプセル・DS・キット(テオドール、テオロング・ユニフィル・テオドリップ他)
デキサメサゾン錠(デカドロン他)
ミコフェノール酸モフェチルカプセル(セルセプト)
ロルノキシカム錠(ロルカム)
②注射剤ほか
アミノフィリン注(ネオフィリン他)
イオメプロール(イオメロン)
エンフルラン吸入剤(エトレン)
コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(ソル・メドロール他)
シタラビン注(キロサイドN)
ジノスタチンスチマラマー注(スマンクス動注用)
ソマトロピン注用(セロスティム注他)
ドセタキセル水和物(タキソテール)
パルミチン酸デキサメサゾン注(リメタゾン)
腹膜透析液(エクストラニール)
フルコナゾール注(ジフルカン他)
フルニトラゼパム注(サイレース、ロヒプノール)
ホスフルコナゾール注(プロジフ静注液)
ミタゾラム注(ドルミカム)
メタスルホン安息香酸デキサメサゾンナトリウム注(セルフチゾン他)
リン酸デキサメサゾンナトリウム注(デカドロン他)
塩酸アザセトロン注(セロトーン)
塩酸イリノテカン注(トポテシン、カンプト)
塩酸ケタミン注(ケタラール)
塩酸ラモセトロン(ナゼア)
抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン注 (ゼットプリン)
抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン注(リンフォグロブリン)
酒石酸ビノレルビン注(ナベルビン)
注射用チアミラールナトリウム(イソゾール他)
注射用チオペンタールナトリウム (ラボナール)