グレープフルーツの果実やジュースに含まれるフラノクマリン類が、小腸において薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4を不可逆的に阻害することによる。薬剤の消化管吸収時の代謝が低下し、その分、血中濃度が高まる。
低下した代謝能はGFJの摂取を中止すると徐々に回復するが、完全に元に戻るには3~4日間必要との報告もある1)。そのため、Aさんに対してはグレープフルーツの摂取を避けるよう適切に指導する必要がある。
GFJと併用注意の記載がある薬剤としてはカルシウム(Ca)拮抗薬がよく知られているが、ほかにも多数ある。GFJによる血中濃度時間曲線下面積(AUC)の変動率は、ブロナンセリン(ロナセン)1.8倍、アトルバスタチン2.5倍、アゼルニジピン3.3倍、ルパタジンフマル酸塩(ルパフィン)4.1倍、シンバスタチン(リポバス他)16倍2)などと、薬剤により異なっている。
いずれの薬剤も、添付文書上の記載は「グレープフルーツジュース」だが、阻害成分は果汁だけでなく、果肉や果皮にも含まれる。そのため、果肉のほか、マーマレードのように果皮を食べる場合にも同様の注意が必要とされる3)。また、フラノクマリン類はグレープフルーツ以外にも、スウィーティー4)、ブンタン4)、バンペイユ(晩白柚)4)、ハッサク4)、ダイダイ5)、甘夏5)などにも含まれるため、グレープフルーツと同様に注意が必要と考えられる。
一方、かんきつ類の中でも、バレンシアオレンジ、レモン、カボス、スイートオレンジジュースや、日本の一般的なみかんである温州みかんはフラノクマリン類をほとんど含まないため、相互作用の可能性が低いとされている6)。ただし、これらのかんきつ類でもレモンのように皮には注意が必要なものもある。
なお、夏みかんは、温州みかんと名称が似ているが、別名を夏橙(ナツダイダイ)ともいい、分類上ではその名の通りダイダイと同じ区に属する。そのため、ダイダイと同様に注意した方がよいと考えられる。
GFJ以外で薬剤との相互作用が知られる飲食物・嗜好品としては喫煙、飲酒、チーズ、マグロ、ニンジン、カラシなどがある。
このうち喫煙については、薬物代謝酵素(CYP1A2など)が誘導されることで、テオフィリン(テオドール他)やチザニジン塩酸塩(テルネリン他)、オランザピン(ジプレキサ他)、ピルフェニドン(ピレスパ)などの薬剤の血中濃度が低下することが知られている。