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フォゼベル(テナパノル)の作用機序【高リン血症】

慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は、腎障害が慢性的に持続する疾患の全体を意味する。

腎臓は老廃物の排泄骨代謝造血器機能調節といった様々な役割を担っているので、CKDによって腎機能低下が進行してしまうと、

といった様々な症状が現れます。

CKDが進行すると、透析が必要な状態になりますが、透析を伴うCKDではリンの排泄がうまくできないことから、特に高リン血症に注意する必要があります。

腸管におけるリンの吸収:傍細胞経路

食物に含まれるリン(リン酸塩)は腸管上皮細胞の隙間(“タイトジャンクション”と呼びます)である傍細胞経路から吸収されると考えられています。2)

腸管におけるリンの吸収メカニズム:タイトジャンクション(傍細胞経路)によってリンが吸収される

タイトジャンクションには、ジッパーみたいな役割を担うクローディンと呼ばれるタンパク質が存在していて、必要に応じてクローディンが構造変化することでタイトジャンクションの開閉を行っています。

また、腸管上皮細胞にはナトリウムイオン(Na+)と水素イオン(H+)を交換するナトリウムイオン/プロトン交換輸送体3(NHE3)が存在していて、Na+とH+の吸収・排泄を調整しています。

通常、NHE3によってH+が腸管内に排泄されることで、腸管上皮細胞内のpHは中性付近に保たれていて、その場合、クローディンは構造変化を起こさないため、タイトジャンクションが開いている状態が保たれています。

フォゼベル(テナパノル)の作用機序:NHE3阻害薬

フォゼベルは腸管上皮細胞のNHE3を選択的に阻害する薬剤です。

NHE3が阻害されることで、Na+の吸収が抑制され、H+の排泄が抑制されます。その結果、腸管上皮細胞内のpHが酸性側に傾き、クローディンの構造変化を引き起こします。

クローディンが構造変化を引き起こすと、タイトジャンクションが閉じられてしまい、腸管内のリン酸塩が傍細胞経路から吸収されなくなってしまいます2)

フォゼベル(テナパノル)の作用機序;NHE3の選択的阻害薬

ちなみに、Na+と水分は同じような動き方をするため、Na+の吸収が抑制されると、水分の吸収も抑制されます。その結果、腸管内には水分が滞留しますので、便秘型のIBSに対しても効果が期待されているというわけです(国内ではIBSは未承認。米国ではIBS-Cに対してIBSRELAの商品名で承認)。

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