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薬剤師必見!高血圧治療における「α遮断薬」入門

高血圧治療における「α遮断薬」の位置づけ

α遮断薬は、高血圧治療の第一選択薬ではありませんが、特定の病態において使用される薬剤です。

代表的な例が褐色細胞腫です。この疾患は「カテコールアミン」の過剰分泌によって引き起こされ、高血圧を伴うことがあります。褐色細胞腫の治療は腫瘍の切除が基本です。ただし、術前の血圧コントロールと手術中のクリーゼ(術中の急激な血圧上昇)の予防で、α遮断薬が用いられる場合もあります。1)

また、早朝高血圧に対する治療薬として選択される場合もあります。早朝高血圧とは、病院での血圧は正常でも、早朝の自宅測定で135/85mmHg以上を示す病態です。1)実際に、α遮断薬の一つであるドキサゾシンを就寝前に服用した結果、早朝血圧が有意に低下したとの報告もあります。2)

さらに、前立腺肥大による排尿障害を合併する高血圧患者に対して、α遮断薬が用いられるケースも少なくありません。高血圧治療ガイドライン2019でも、こうした症例に対して使用しやすい薬剤の一つと位置づけられています。1)

このように、α遮断薬は高血圧治療の第一選択ではないものの、特定の症例において補助的に活用される場面があるのです。

高血圧治療における「α遮断薬」の作用機序と種類について

高血圧治療で用いられる「α遮断薬」は、血管平滑筋に存在するα1受容体を阻害することで、交感神経刺激による血管収縮を抑え、末梢血管を拡張させて血圧を下げる作用があります。1)

高血圧治療として用いられるα遮断薬の例は、以下の3点が挙げられます。

  • ドキサゾシン(カルデナリン)3)
  • ウラピジル(エブランチル)4)
  • ブナゾシン(デタンドール)5)

高血圧治療における「α遮断薬」の服薬指導のポイント

「α遮断薬」を高血圧治療に用いる際には、服用初期や増量時に起こりやすい「起立性低血圧」への注意が必要です。1)

服用直後に血圧が急激に低下することで、立ちくらみや動悸、失神などを引き起こす可能性があります。特に初回投与時の服薬指導では、起立性低血圧による副作用を防ぐため、以下のような生活上の注意点を伝えることが大切です。

  • 朝はゆっくり起き上がる
  • ふらつきを感じたら、高所での作業や機械の運転は控える
  • 湯船から立ち上がるときは、急に立たずゆっくり動く

また、服用初期には効果が安定しないこともあるため、不十分でも自己判断で増量せず、必ず医師の指示を守るよう伝えましょう。

さらに治療の効果や副作用に患者自身が気づけるよう、日頃から血圧や体調の変化に目を向ける習慣を身につけてもらうことも大切です。座った状態で毎日同じ時間帯に血圧を測定すると、血圧変動の傾向がつかみやすくなります。薬剤の注意点とあわせて、血圧の記録を習慣づけるよう促しましょう。

前立腺肥大症治療に使用される「α遮断薬」との違いに注意!

α遮断薬の中には、前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬として、広く使われている薬剤もあります。代表的なα遮断薬は、以下の通りです。

  • タムスロシン(ハルナール)6)
  • ナフトピジル(フリバス)7)
  • シロドシン(ユリーフ)8)

これらは前立腺や膀胱出口付近の平滑筋に分布するα1受容体を阻害し、筋緊張を和らげて排尿をスムーズにする作用があります。9)この作用により、前立腺肥大症に伴う排尿障害の改善が期待されます。

ただし、これらの薬剤は前立腺肥大症のみが適応であり、高血圧治療には保険適応がありません。服薬指導時には適応を確認し、医師の処方意図に沿って「排尿障害の治療」を目的とした使用であることを患者にもわかりやすく伝えることが大切です。

なお、ウラピジル(エブランチル)のように、高血圧と前立腺肥大の両方に保険適応があるα遮断薬もあります。4)使用薬剤によって適応が異なるため、処方意図を確認し、適切な情報提供を心がけましょう。

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