神社解説

エスゾピクロン(ルネスタ)とは?

エスゾピクロン(ルネスタ)の効果と副作用について、精神科医が詳しく解説します。

エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)は、非ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬になります。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べると、エスゾピクロンは睡眠にしぼって作用します。

このため筋弛緩作用が少ないためにふらつきが少なく、耐性がつきにくいために依存性が抑えられています。

エスゾピクロンの特徴は、その効果の早さになります。作用時間が短く、翌日に眠気が残りにくい睡眠薬になります。

このためエスゾピクロンは、

  • 入眠障害

に使われることが多い睡眠薬になります。

エスゾピクロンは、ゾピクロン(商品名:アモバン)を改良して作られたお薬になります。

ゾピクロンの成分をよく調べると、睡眠薬としての効果の大部分は、S体(光学異性体)と呼ばれる半分であることがわかりました。

このS体だけを取り出したのが、エスゾピクロンになります。

これによって、ゾピクロンで問題になることが多かった苦味の副作用が軽減されています。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、

  • アモバン(一般名:ゾピクロン):1989年発売
  • マイスリ―(一般名:ゾルピデム):2000年発売
  • ルネスタ(一般名:エスゾピクロン):2012年発売

このように3種類発売されています。

ルネスタの睡眠薬での位置づけ

ルネスタの睡眠薬の中での位置づけをみていきましょう。

睡眠薬は、その作用メカニズムの違いから2つに分けることができます。

  • 脳の機能を低下させる睡眠薬
  • 自然な眠気を強くする睡眠薬

ルネスタは、脳の機能を低下させる睡眠薬になります。

覚醒に働いている神経活動を抑えることで、眠気を促していきます。

「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出し、強引さのある効き方になります。このため、睡眠導入剤と呼ばれることもあります。

一方で、自然な眠気を強くする睡眠薬も発売されています。

私たちの睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬です。本来の眠気を強める形ですので、効果が人によっても異なります。

ルネスタなどの脳の機能を低下させるタイプのお薬は、ある程度の効果や副作用が計算できるというメリットがあります。このため、

  • 作用時間
  • 強さ

から睡眠薬を選んでいきます。

ルネスタはその中でも、作用時間が短いお薬になります。入眠障害に使われることが多いお薬になります。

ネスタの用法と作用時間

ルネスタの用法は、以下のようになっています。

  • 開始用量:2mg(高齢者は1mg)
  • 用法:1日1回就寝前
  • 最高用量:3mg(高齢者は2mg)

ルネスタは1~2mgから開始していくことが一般的です。

肝機能障害や腎機能障害がある方、高齢者では効果が強まってしまう可能性があるため、1mgからとなっています。

食事をとってしまうと効果が減薬してしまうため、空腹時に服用する必要があります。

そしてルネスタは健忘の副作用があるため、就寝直前に服用

ルネスタは即効性が期待でき、「服用まもなく効果が期待でき、気づいたら朝になっていた」というような効き目になります。

作用時間は短く、寝つきを改善する目的で使われることが多いです。

ルネスタの副作用の対処法

睡眠薬では、作用時間によって注意すべき副作用が異なります。

  • 作用時間が長い睡眠薬・・・眠気・ふらつき
  • 作用時間が短い睡眠薬・・・健忘・依存性

作用時間が長いということは、薬が身体に少しずつたまっていくことにつながります。

睡眠薬の眠気が翌朝に残ってしまったり、筋弛緩作用が日中に働いてしまうことがあります。

それに対して作用時間が短い睡眠薬は、薬が急激に作用するということになります。

このため中途半端な覚醒状態となってしまって健忘(物忘れ)が認められたり、お薬の急激な変化に体が慣れようとしてしまうことで、依存が成立してしまうことがあります。

ルネスタは作用時間が短いお薬ですので、健忘や依存性に注意が必要です。

そしてルネスタ特有の副作用として、翌朝に残る口の中の苦味があげられます。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

ルネスタと健忘

睡眠薬を服用した後に、記憶がなくなってしまうという副作用が生じることがあります。

記憶はなくなっているというと怖いかと思いますが、周囲からみると普通にいつも通りのあなたの行動をとっています。

友達に電話していたり、お菓子を食べ散らかしていたりといったことで、翌朝になってその痕跡をみつけてビックリします。

このような「物忘れ」を、「前向性健忘」といいます。睡眠薬を服用して、それ以降(前向き)の記憶を忘れてしまうのです。

このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうことで、海馬を中心とした記憶に関する脳の機能が低下してしまうためと考えられています。

ですから前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすい副作用になります。

ルネスタは作用時間が短く、健忘の副作用は起こりやすいです。

健忘の対策としては、

  • 寝る直前に睡眠薬を服用すること
  • 絶対にアルコールと一緒に睡眠薬を飲まない

になります。

それでも認められる場合は、

  • 薬の量を減らす
  • 作用時間の長い睡眠薬に変更する

このようにしていきます。

ルネスタと苦味

ルネスタを服用すると、翌朝に口の中に苦味が残ることがあります。

お薬自体が苦いというわけではなく、翌日に苦味が続いてしまいます。

苦味が生じる理由はよくわかっておらず、何らかの苦み成分が唾液から分泌されていると考えられています。

有効成分であるエスゾピクロンや、その肝臓での代謝産物が合わさって、独特の苦みが生じると考えられています。

唾液ではなくて、味を感じている味蕾細胞の周囲の血流から感じているともいわれています。

からだの内部からの苦みとも考えられているため、うがいをしても変化がないことが多いです。

ルネスタで苦味が認められた場合の対処法としては、

  • 我慢して様子をみる
  • ルネスタを減量する
  • 他の薬に変更する

という方法があります。

ルネスタの元となったアモバンの方が、苦味の副作用は目立ち

ルネスタでは、苦味のために服用が困難になることはそこまで多くはありません。

ルネスタの反跳性不眠(離脱症状)と減薬方法

ルネスタは長期間にわたって使っていると、お薬があることに身体に慣れてしまいます。

その結果、お薬としての効果は薄れているのに、薬を減らすと不眠が強まってしまうことがあります。

このような状態を反跳性不眠といいます。睡眠薬の離脱症状とも言えます。

「睡眠薬がないと眠れない」と勘違いしてしまうことが多いのですが、薬がやめられないのは反跳性不眠が原因であることも少なくありません。

このような状態になると、睡眠薬の量は増えないけれどもやめられなくなってしまいます。

このことを、常用量依存といったりします。

ルネスタは超短時間作用型の睡眠薬ですが、このように作用時間が短い睡眠薬では、反跳性不眠は起こりやすいです。

以下の図のように、以前にもまして不眠が強まってしまうので、ルネスタをなかなかやめられなくなってしまいます。

ルネスタを使っていくにあたっては、睡眠習慣を見直すことも重要です。

睡眠習慣と合わせて取り組むことで、睡眠薬だけに依存することなく不眠の改善を行っていきましょう。

ここでは特に、睡眠薬の使い方に関係する部分についてお伝えします。不眠で寝付けないとき、多くの方が間違った対処法を行っています。

  • お酒に頼る
  • なるべく早く寝る

この2つは不眠を悪化させてしまいます。お酒は寝つきを一時的に良くしてくれますが、睡眠の質を落としてしまいます。

また、なるべく早く寝てベッドで粘っている方もいらっしゃいます。

ベッドでゴロゴロして眠れない時間をすごすことは、「なかなか眠れない」という失敗した認知を強めてしまいます。

むしろ睡眠時間は、ギリギリまで絞ってしまったほうがよいです。

そして眠れないときは、粘らずに睡眠薬を使ってしまったほうが不眠はよくなります。

睡眠時間を5~6時間にしぼってデッドラインを設定し、その時間までは自然な眠気が生じたらベッドに入るようにしていきます。

その際にお薬を使っていただき、それでも眠れなければ頓服をすぐに使ってください。

このようにして、ベッドに入れば眠れるという認知を作っていくことが大切です。

その他にも、睡眠に良い生活習慣があります。

睡眠に関する正しい知識を理解して、生活で取り入れられることは意識していくことが大切です。

-神社解説