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PL配合顆粒とSG配合顆粒の違いとは?

回答:『PL配合顆粒』はかぜ薬、『SG配合顆粒』は痛み止め

 『PL配合顆粒』と『SG配合顆粒』は、どちらも解熱鎮痛薬の「アセトアミノフェン」を含む配合薬です。

 『PL配合顆粒』は総合感冒薬(かぜ薬)、『SG配合顆粒』は解熱鎮痛薬(痛み止め)です。

 『PL配合顆粒』は、解熱鎮痛薬の他に鼻水などの症状を抑える「抗ヒスタミン薬」が配合されています。
 『SG配合顆粒』は、鎮痛薬や鎮痛補助を目的とした薬を4種類配合した薬です。

 どちらにも「アセトアミノフェン」と「無水カフェイン」が入っているため、併用するとこれらの成分が重複し、用量オーバーになる点に注意が必要です。

 

回答の根拠①:配合されている薬と、それぞれの効果の違い

 『PL配合顆粒』と『SG配合顆粒』は、どちらにも4種類の薬が配合されています。「アセトアミノフェン」と「無水カフェイン」は共通していますが、他の2つは全く異なる薬が配合されています。

PL配合顆粒(1回1.0g中)SG配合顆粒(1回1.0g中)
【解熱鎮痛薬】
アセトアミノフェン 150mg
【解熱鎮痛薬】
アセトアミノフェン 250mg
無水カフェイン 60mg無水カフェイン 50mg
【解熱鎮痛薬】
サリチルアミド 270mg
【解熱鎮痛薬】
イソプロピルアンチピリン 150mg
【抗ヒスタミン薬】
プロメタジンメチレンジサリチル酸
13.5mg
【催眠鎮静薬】
アリルイソプロピルアセチル尿素
60mg

かぜ薬である『PL配合顆粒』には、解熱鎮痛薬の「アセトアミノフェン」と一緒に、アレルギーを抑える抗ヒスタミン薬「プロメタジン」が配合されています。そのため、発熱や痛みだけでなく、風邪に伴う鼻水の症状にも効果を期待できま

 一方で『SG配合顆粒』には、「アセトアミノフェン」の他にもお互いの効果を補助・強め合うコンセプトで薬が配合されています。そのため、「アセトアミノフェン」単独で使うよりも高い鎮痛効果を期待できます。カフェインの目的と効果
「カフェイン」には、風邪をひいた時の集中力や注意力の低下を軽減してくれる効果も確認されています5)。そのため、『PL配合顆粒』では風邪によるぼんやり感の解消も期待できます。

 

回答の根拠②:配合されている薬と、注意したいリスク

 『PLは医療顆粒』と『SG配合顆粒』は、これ1つ使うだけで4種類の薬を使うことになるため、効果だけでなく副作用のリスクも高くなります。特に、『PL配合顆粒』には高齢者でハイリスクな抗ヒスタミン薬、『SG配合顆粒』にはピリン系の薬や習慣性のある催眠鎮静薬が配合されている点に注意が必要です。

 

『PL配合顆粒』の注意点~眠気や緑内障・前立腺肥大の症状悪化リスク

 『PL配合顆粒』に配合されている抗ヒスタミン薬「プロメタジン」は、風邪の鼻症状にも効果のある古いタイプの薬です。そのため、眠気が強く現れるほか、抗コリン作用も持つため高齢者では緑内障や前立腺肥大の症状を悪化させる恐れがあります。
 また、そもそも『PL配合顆粒』は風邪による発熱や痛み、鼻水といった症状を和らげる薬で、風邪の予防や根本的な治療ができる薬ではない、ということにも注意が必要です。

 

『SG配合顆粒』の注意点~ピリン系の薬と催眠鎮静薬のリスク

 『SG配合顆粒』には、「ピリン系」の薬である「イソプロピルアンチピリン」が配合されているため、ピリンアレルギーの人は使うことができません

※ピリン系=ピラゾロン基本骨格を有する解熱鎮痛薬の例
ピラゾロン誘導体:アンチピリン、アミノピリン、スルピリン、イソプロピルアンチピリン
ピラゾリジン誘導体:フェニルブタゾン、ケトフェニルブタゾン、フェプラゾン、スルフィンピラゾン

 また、『SG配合顆粒』に配合されている「アリルイソプロピルアセチル尿素」は催眠鎮静薬に分類される薬で、眠くなる作用があります。さらに、薬疹が出やすく、習慣性や依存性もあるほか、連用していると脳の変性を伴う慢性中毒を起こすこともある成分のため、安易な使用は避けた方が無難です。

薬剤師としてのアドバイス:多剤配合の”便利さ”にはリスクも伴う

 『PL配合顆粒』と『SG配合顆粒』は、これ1つに4種類の有効成分が配合されており、薬を単独で使うよりも幅広い、あるいは強力な効果を期待できる便利な製剤です。しかし、使う薬の数が増えればそれだけ副作用リスクも増えることになります。”便利さ”の代償として通常よりも高いリスクが伴うことには注意が必要です。

 市販のかぜ薬などにも、こうした”便利”な多剤配合の商品は多いですが、薬というのは本来、自分にとって必要最低限のものだけを選んで使うのが基本です。配合剤に自分にとって不要な有効成分まで含まれるのであれば、「アセトアミノフェン」などを単独で使うことをお勧めします。

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他の資料の記載内容の比較

PL配合顆粒SG配合顆粒
有効成分1.サリチルアミド
2.アセトアミノフェン
3.無水カフェイン
4.プロメタジンメチレンジサリチル酸
1.イソプロピルアンチピリン
2.アセトアミノフェン
3.無水カフェイン
4.アリルイソプロピルアセチル尿素
薬効分類総合感冒薬解熱鎮痛薬
名前の由来一般用医薬品の総合かぜ薬パイロン(pylon)鎮痛薬(Sedative)と顆粒(Granules)
用法1日4回1日3~4回、もしくは頓服
主な適応症感冒、上気道炎に伴う症状感冒の解熱、耳痛、咽頭痛、月経痛、頭痛、歯痛、症候性神経痛、外傷痛
服用後の自動車運転禁止
(抗ヒスタミン薬=プロメタジンによる眠気)
禁止
(催眠鎮静薬=アリルイソプロピルアセチル尿素による眠気)
ピリンアレルギーに対する使用(制限なし)禁忌
製造販売元塩野義製薬塩野義製薬
同成分のOTC医薬品『パイロンPL配合顆粒』『セデス・ハイ』、『セデス・ハイG』

 

+αの情報①:『PL配合顆粒』と『SG配合顆粒』の併用

 『PL配合顆粒』と『SG配合顆粒』には、悪い相互作用を起こすような成分は含まれていません。しかし、「アセトアミノフェン」と「無水カフェイン」が重複しているため、用量オーバーにならないよう気を付ける必要があります。

 

「アセトアミノフェン」~1日4回で併用すると用量オーバーに

 『PL配合顆粒』と『SG配合顆粒』を併用した場合、「アセトアミノフェン」の総量は1回で400mgです。
→1日3回で併用した場合:1,200mg
→1日4回で併用した場合:1,600mg

 風邪の解熱・鎮痛に使う場合、「アセトアミノフェン」は1日1,500mgが上限とされています7)。また、「アセトアミノフェン」は過量に摂取すると肝臓に負担がかかる恐れがあるため、1日1,500mgを超えて使う場合には定期的な肝機能検査が推奨されています8)。

 このことから、もし併用する場合には1日3回までの服用に留めるなど、用量オーバーにならないように調節する必要があります。

 8) カロナール錠 添付文書

 

「無水カフェイン」~かなり”多め”になることに注意

 『PL配合顆粒』と『SG配合顆粒』を併用した場合、「カフェイン」の総量は1回で110mgです。
→1日3回で併用した場合:330mg
→1日4回で併用した場合:440mg

 「カフェイン」は不眠症の原因になったり、不安や焦燥などの副作用を起こしたり、あるいは過量になると心臓に負担をかける恐れもあります。

 日本では明確な基準は設けられていませんが、『PL配合顆粒』と『SG配合顆粒』を併用すると、世界各国の「カフェイン」の上限量を超えてしまうことには注意が必要です。

※「カフェイン」の上限量
フィンランド食品安全局(EVIRA):成人で1日125mgを越えないことが望ましい
オーストラリア・ニュージランド食品基準機関(FSANZ):成人で1日210mg程度
カナダ保健省:健康な成人であれば1日400mgまで 

+αの情報②:OTC医薬品の『パイロンPL顆粒』

 ドラッグストア等で購入できる一般用医薬品(OTC医薬品)に、よく似た名前の『パイロンPL顆粒』や『パイロンPL顆粒Pro』という商品があります。これらの商品と『PL配合顆粒』は全く同じ成分の薬です。

PL配合顆粒はパイロンでSG配合顆粒はセデスである。
 『パイロンPL顆粒Pro』は『PL配合顆粒』と成分量や使い方も全く同じですが、『パイロンPL顆粒』は薬の1回量や服用回数が少なめに制限されています。

PL配合顆粒
パイロンPL顆粒Pro
(1回1.0g中)
パイロンPL顆粒
(1回0.8g中)
1日の服用回数4回3回
【解熱鎮痛薬】
アセトアミノフェン
150mg120mg
無水カフェイン60mg48mg
【解熱鎮痛薬】
サリチルアミド
270mg216mg
【抗ヒスタミン薬】
プロメタジン
メチレンジサリチル酸
13.5mg10.8mg

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