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がん性疼痛の基礎と世界初の貼付型がん性疼痛治療薬:ジクトルテープ

2021年5月、がん性疼痛に適応を有する経皮吸収型NSAIDsとしてジクトルテープ75mg(一般名:ジクロフェナクナトリウム)が発売されました。
今まではがん性疼痛に適応のあるNDSIDsはロピオン注のみでしたので、新たな選択肢となり得る薬剤です。

がん性疼痛治療、そしてジクトルテープの特徴について考えてみたいと思います。

がん性疼痛について知る

がん患者に対する痛み治療のあり方

以前は、がんそのものの治療で効果を得られなくなった末期に「痛みの治療」を行うという考え方でしたが、近年ではがんと診断されたその時から、がんそのものの治療と並行して必要に応じた痛みの治療を行うようWHOは提唱しています。

癌性疼痛

化学療法を行っている患者がいた場合、抗がん剤や支持療法のチェックだけでなく、痛みが出ていないかを確認していきたいですね。

がん性疼痛の治療

がん性疼痛治療は、痛みで眠れなくなることがないようにすることを目標にスタートします。
睡眠を確保できるようになったら安静時の痛みの緩和、そして体動時の痛みの緩和を目標としていきます。

癌性疼痛治療の目標

また、がん性疼痛に対する薬物療法は、WHO方式がん疼痛治療法に則って行うことが基本となります。
WHO方式がん疼痛治療法は、鎮痛薬の使用について、5つの基本原則、痛みの強さに応じた段階的な選択などから成り立ちます。

5つの基本原則

  • 経口的に(by mouth)
  • 時間を決めて規則正しく(by the clock)
  • 除痛ラダーにそって効力の順に(by the ladder)
  • 患者ごとの個別的な量で(for the individual)
  • その上で細かい配慮を(with attention detail)
3段階除痛ラダー

第1段階ではNSAIDsアセトアミノフェンのいずれかを使用します。
第2段階では軽度から中等度の強さの痛みに用いられるオピオイド鎮痛薬を使用します。
第3段階では中等度から高度の強さの痛みに用いられるオピオイド鎮痛薬を使用します。

いずれの場合も、現段階の治療で効果不十分な場合にステップアップをしていきます。

第2段階、第3段階ともに、非オピオイド鎮痛薬の併用は鎮痛効果の増強が期待できるため、オピオイド鎮痛薬が開始されたからといってNSAIDsやアセトアミノフェンをカットするのではなく、併用して使用していくことが重要です。

持続痛と突出痛

痛みのパターンには持続痛突出痛があります。

持続痛:「24時間のうち12時間以上経験される平均的な痛み」として患者によって表現される痛み。
突出痛:持続痛の有無や程度、鎮痛薬使用の有無に関わらず発生する一過性の痛み、または痛みの増強。

持続痛と突出痛の違い

痛みの程度が疼痛閾値を下回るように(持続痛が生じないように)、鎮痛薬を使用し調整していきます。

突出痛はがん患者の約70%にみられ、がんが進行するほど発生頻度は高くなります。
突出痛に対してはレスキュー投与で対応していきます。
レスキューは基本的には持続痛治療に用いている鎮痛薬を使用します。

レスキュー投与の回数が多い場合、持続痛が緩和しきれていない可能性があるため、持続痛治療に用いている鎮痛薬の増量を検討したりします。
それでも持続痛がとれなかったら、除痛ラダーのステップを上げていきます。

ジクトルテープの基本情報

有効成分

ジクロフェナクナトリウム

効能・効果

各種がんにおける鎮痛

実は、がん性疼痛に使用できる非オピオイド鎮痛薬はごく一部です。

癌性疼痛に使用

可能な非オピオイド鎮痛薬

今までは使用できるNSAIDsはフルルビプロフェンだけでしたが、ジクトルテープの登場によって貼付という選択肢をとることができるようになりました。

用法・用量

1日1回、2枚(ジクロフェナクNsとして150mg)を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部又は大腿部に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替える。

【添付文書】用法及び用量に関連する注意

本剤3枚貼付時の全身曝露量がジクロフェナクナトリウム経口剤の通常用量投与時と同程度に達することから、1日貼付枚数は3枚を超えないこと。

1日3枚までと制限がある貼付剤ですね。
押さえておきたいポイントです。 
また、ジクトルテープは全身作用型の貼付剤になります。
同有効成分の薬剤としてボルタレンテープもありますが、こちらはがん性疼痛への適応はなく、局所作用型の貼付剤になります。

薬物動態

ジクトルテープは投与7日目以降に定常状態に達するので、効果が安定するためには1週間以上かかります。
そのため、患者には十分な効果が得られるには1週間程度かかることを伝えることが重要です。
ジクトルテープの効果が十分に得られるまでは、他の鎮痛薬の併用が望ましいかもしれません。

【添付文書】用法及び用量に関連する注意

本剤投与時は他の全身作用を期待する消炎鎮痛剤との併用は可能な限り避けることとし、やむを得ず併用する場合には、必要最小限の使用にとどめ、患者の状態に十分注意すること。

添付文書上も、他の鎮痛薬との併用に関して注意喚起はありますが、必要最小限であれば併用も可能そうです。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00069359

ジクトルテープとロコアテープとの併用について

ジクトルテープとロコアテープ(ロキソプロフェン)は、同じNSAIDs(非ステロイド性鎮痛消炎薬)であり、全身に作用するため、併用は基本的に避けるべきです。副作用の危険性を増やす可能性があるため、医師または薬剤師に相談することを推奨します。

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