神社解説

夜間頻尿と心不全

日中の利尿効果を高めるため

 夜間頻尿とは、夜間に排尿のために1回以上起きてしまい、そのことに困っている状態をいう。夜間頻尿を引き起こす主な原因は、膀胱容量の減少と夜間尿量の増加である。多尿・夜間多尿、睡眠障害、膀胱蓄尿障害、加齢など様々な要因が関与する。

 夜間多尿とは、就寝後の排尿量が異常に多い状態を指す。日本排尿機能学会の『夜間頻尿診療ガイドライン』(2016)によると、1日の尿量(24時間尿量)のうち夜間尿量が占める割合が、高齢者では33%以上、若年者では20%以上を占めるかどうかが夜間多尿の基準とされている。夜間多尿には、心不全、腎不全、睡眠時無呼吸症候群などの疾患、抗利尿ホルモン分泌の日内リズム消失などが関与していることが少なくない。

 Aさんは心不全の治療中であり、それに伴う夜間多尿であると推察される。心不全患者では、交感神経系やレニン・アンジオテンシン系が亢進し、腎血流量の減少により尿量が減少する1)。ただし夜間に安静状態になると腎血流が改善し、夜間尿量がむしろ増加すると考えられる。心不全の症状として、夜間頻尿と浮腫(むくみ)が現れることがあります。心臓の機能が低下すると、血液を全身に十分に送り出せなくなり、下半身に水分が溜まりやすくなります。夜間に横になると、この水分が心臓に戻り、腎臓で尿として排泄されるため、夜間頻尿の原因となります。

これにループ利尿薬のフロセミド(商品名ラシックス他)を投与すると、腎尿細管へのNaやK、水の再吸収を阻害し、全体の尿量を増やす。

 インタビューフォームによると、フロセミドの利尿効果は経口投与後約1時間以内に発現し、6時間程度持続する。そのため同薬を朝または昼に服用することにより日中の利尿が促され、結果的に夜間の多尿も改善するものと考えられる。Aさんの場合、朝の投与のみでは利尿効果が十分でなかったと判断し、処方医は昼にもフロセミドを追加したと考えられる。

 フロセミド投与開始時には、急激に利尿効果が表れることがあるため、脱水や血液濃縮による血栓塞栓症、電解質失調などの兆候に留意する。特に高齢になるほど脱水に陥りやすいため、口渇や皮膚の乾燥のほか、起立性低血圧などの症状についても患者に周知する必要がある。

 夜間頻尿の治療に用いられ得る薬剤としては、フロセミドなど利尿薬のほかにデスモプレシン酢酸塩水和物(ミニリンメルト)や、イミプラミン塩酸塩(トフラニール、イミドール)などの三環系抗うつ薬などが挙げられる。さらに、ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン他)などの非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)も、プロスタグランジン産生抑制による腎血流量の減少や、尿細管のヘンレ係蹄でのNa再吸収の促進、抗利尿ホルモン作用の亢進などにより尿量を減少させる。神経因性膀胱に伴う頻尿、尿失禁、排尿困難などの場合には、メコバラミン(メチコバール他)などビタミンB12製剤が用いられる場合もある。

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